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視神経脊髄炎関連疾患の新規分類方法を発表 アストロサイト傷害性疾患の研究に貢献が期待

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:病院脳神経内科学分野・講師・三須 建郎
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 視神経脊髄炎注1関連疾患における病理学的病期分類を初めて発表。
  • 補体注2の活動とアストロサイト注3形態により4つに分類ができることが判明。
  • アストロサイトが関連する疾患の病態解明や治療開発につながると期待される。

【概要】

視神経脊髄炎関連疾患は、国の指定難病の一つで、神経の繊維を「絶縁」する役目を持つ髄鞘が壊れ、神経線維がむき出しになってしまう多発性硬化症の類縁疾患です。東北大学病院脳神経内科学分野の三須講師らの研究グループは、視神経脊髄炎関連疾患について新規の病理学的分類を発表しました。これまで、疾患の時期(病期)におけるアストロサイトの変化を指標とした分類基準がなかったこともあり、疾患の初期にアストロサイトがどのように傷害されて神経障害が進み、どのような時間経過で神経組織が修復する過程に移行するのか不明でした。本研究は、アストロサイトの傷害によって引き起こされる視神経脊髄炎関連疾患の病変について、疾患の時期による特徴の違いを初めて明らかにした重要な報告です。本研究によって、アストロサイト傷害性疾患を含む神経疾患が引き起こされる仕組みについて、さらなる解明に貢献することが期待されます。

本研究成果は、2021年3月12日付Brain誌(電子版)で掲載され、2021年5月12日付でBrain誌に正式に掲載されます。

図1.アストロサイトの疾患時期の分類
アストロサイトは正常では、中枢神経内に広く分布し、特に血管周囲等から足突起を伸ばして、血管を裏打ちするように指示している。疾患初期には、まず(1)血管から自己抗体や補体による影響を受けると、伸ばしている足突起から補体による影響を受けて、病変部分のアストロサイトが溶けて脱落する。アストロサイトが分泌する様々な因子の供給や代謝機能が損なわれ、その病変局所の神経細胞の生死に影響することとなる。 疾患初期には、徐々に(2)新しいアストロサイトが発現してきて組織が修復をされ始めるが、脱髄などはまだ続いている時期にあたる。初期を過ぎると、(3)アストロサイトは概ね活性化して、特徴的な形を持つアストロサイトが増殖するようになり、(4)やがて病変組織全体を覆うように密生し、組織が固くなったり(線維化)してしまう。

【用語解説】

注1. 視神経脊髄炎:近年、抗アクアポリン4抗体によって生じる中枢神経系の自己免疫疾患と考えられている。アストロサイトに発現するアクアポリン4に対する抗体・補体による傷害によって生じる。

注2. 補体・膜侵襲複合体:補体が活性化する過程で、初めにC1やC3といった因子が活性化し、様々な因子が次々と活性化して最終的にC9を含む膜侵襲複合体を細胞に形成して細胞を溶かしてしまう。組織におけるC3dはC3の活性を意味し、C9は膜侵襲複合体の形成を意味する。

注3. アストロサイト:中枢神経内の星状の細胞で、昔から組織構造を支える支持細胞と言われた。血管を裏側から覆う足突起を伸ばして血液脳関門を形成して脳を保護するとともに、様々な代謝に関わり脳の恒常性維持に深くかかわる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学病院脳神経内科学
講師 三須 建郎 (みす たつろう)
電話番号:022-717-7189
Eメール:misu*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-8032
FAX番号:022-717-8931
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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