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海馬と大脳新皮質を繋ぐ記憶ネットワークの解明~外側嗅内皮質が長期記憶の形成に重要であることを示唆~

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:大学院生命科学研究科脳神経システム分野・助教・大原 慎也
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 記憶の中枢である「海馬」と記憶の最終保存場所である「大脳新皮質」を繋ぐ、「嗅内皮質*1」の神経ネットワークの配線を調べました。
  • 外側嗅内皮質が海馬から大脳新皮質への情報伝達に重要であることが明らかになりました。
  • 私たちがどのようにして日々の出来事を記憶しているのか、そのメカニズム解明に役立つことが期待されます。

【概要】

私たちは日々経験した出来事を思い出として記憶しています。この長期記憶の形成には、記憶の中枢である「海馬」と記憶の最終保存場所である「大脳新皮質」から成る神経ネットワークが重要です。海馬から大脳新皮質への情報伝達のハブとして働いているのが「嗅内皮質」のVb層細胞ですが、その詳細な回路構成はわかっていませんでした。

東北大学大学院生命科学研究科の大原慎也助教は、ノルウエー科学技術大学のMenno Witter教授らと共に、遺伝子改変マウスを用いて嗅内皮質Vb層細胞の配線を調べました。その結果、Vb層細胞の形成する神経回路が嗅内皮質の内側と外側で大きく異なることを発見し、外側嗅内皮質が長期記憶の形成に重要な役割を果たしている可能性が判明しました。明らかにした神経ネットワーク配線を基に、外側嗅内皮質を中心とする記憶メカニズムの解明が進むことが期待されます。

本研究結果は、3月26日のeLife誌(電子版)に掲載されました。

図1 外側嗅内皮質(LEC)と内側嗅内皮質(MEC)において、Vb層細胞の局所回路構造を調べた。Vb層細胞を光刺激した際、外側嗅内皮質のVa層細胞(細胞1)は応答したのに対し、内側嗅内皮質のVa層細胞(細胞4)は応答しなかった。このことから、Vb層細胞からVa層細胞への情報伝達効率は内側嗅内皮質より外側嗅内皮質で高いことが示された。

【用語解説】

*1 嗅内皮質:海馬と共に記憶に深く関わる脳領域であり、双子のように類似した構造を持つ2つの領域、内側嗅内皮質と外側嗅内皮質から構成されます。内側嗅内皮質は空間情報を処理する一方、外側嗅内皮質の細胞は匂いや物体の情報処理に関わります。内側嗅内皮質と外側嗅内皮質のどちらも、神経細胞が規則正しく整列した層構造から形成されており、層ごとに異なる配線を持ち、異なる情報処理を行なっています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 大原 慎也(おおはら しんや)
電話番号: 022-217-5052
Eメール: shinya.ohara.d3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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