2021年 | プレスリリース・研究成果
磁性体におけるキラリティーメモリ効果の発見
【本学研究者情報】
〇本学代表者所属・職・氏名:金属材料研究所・教授・小野瀬 佳文
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 結晶や分子構造などにおいて、鏡に映した像がもとの構造と重ならない「ねじれた」性質をキラリティーと呼びます。
- キラリティーは、高エネルギー物理から生命まで幅広い分野で重要な概念です。特に、生体中でキラリティーによるねじれ方がそろったホモキラリティーは生命の起源と関連した謎とされてきました。
- キラル磁気状態であるらせん磁気状態のキラリティーについて調べた結果、非キラル相の強磁性相への相転移後でもキラリティーがドメイン壁のねじれとして保存されている現象が観測されました。
【概要】
二重らせん構造を示すDNAなどのねじれた物質では、鏡に映した像はもとの構造とねじれ方が逆になります。このように鏡映像がもとの構造と異なる性質のことをキラリティーと呼びます。同様なキラリティーは磁気構造においてもつくることができます。磁気モーメントがらせん状に整列するらせん磁気構造は、DNAと同様にキラリティーを有しています。磁性体の磁気構造は極めて安定で外部磁場や温度などのパラメータで制御しやすく実験の再現性もよいことから、らせん磁性体はキラリティーを調べるための有用な舞台となっています。
東京大学大学院総合文化研究科大学院生および東北大学特別研究生(現在理化学研究所研究員)の蒋男と東北大学金属材料研究所の新居陽一助教、小野瀬佳文教授は、東京大学大学院工学系研究科および東北大学材料科学高等研究所の齊藤英治教授、東邦大学理学部の大江純一郎教授らと共同で、高温にある強磁性相のドメイン壁にらせん磁性体のキラリティー情報が保存されるキラリティーメモリ効果を発見しました。この結果は、非キラル相における欠陥などにあるキラル構造の重要性を示唆しており、一般的なキラリティー問題に一石を投じる結果となっております。
本研究の詳細はPhysical Review Lettersに2021年4月28日(米国時間)に掲載されました。また、Editors' Suggestionに選出されています。
図1:キラルな分子構造や磁気構造の鏡映。DNAや多くの有機分子は、鏡映した構造と元の構造が重ならないキラルな性質を示します。同様に、ヘリカル磁気構造も鏡映像と元の磁気構造が重ならずキラリティーを有します。
問い合わせ先
◆研究内容に関して
東北大学金属材料研究所
量子機能物性学研究部門
小野瀬 佳文
TEL:022-215-2040
Email:onose*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
◆報道に関して
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144 FAX:022-215-2482
Email:imr-press*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)