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電気で操る磁石の研究で新発見~電子スピンで「沈黙の磁石」にGHzのモーター回転~

【本学研究者情報】

〇本学代表者所属・職・氏名:電気通信研究所 附属ナノ・スピン実験施設・教授・深見 俊輔
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 四半世紀にわたる磁石の電気的制御の研究に新たな可能性をもたらす新現象を発見
  • 電子スピンで「沈黙の磁石」反強磁性体内に恒常回転を誘起し、磁気構造を高効率に操作
  • 従来にない発振器や乱数生成器などの新機能スピントロニクス素子の実現が期待

【概要】

電子の持つ電気的性質と磁気的性質(スピン)を同時に利用するスピントロニクスにより、磁石を電気的に操ることができます。これは四半世紀にわたるこの分野の中心的な課題であり、様々な現象が発見され、応用展開が拓かれてきました。

東北大学材料科学高等研究所の竹内祐太朗特任助教、学際科学フロンティア研究所の山根結太助教、電気通信研究所の深見俊輔教授、大野英男教授(現東北大学総長)、日本原子力研究開発機構の家田淳一研究主幹らは、強い磁気を内部に秘する「沈黙の磁石」反強磁性体に電子スピンを作用させたときに生じる現象を調べ、内部のカイラルスピン構造(注1)が無磁場中で恒常的に回転する新現象を発見しました。また、この回転の周波数はGHz程度であり、モーターと同様に入力する電流の大きさに応じて変化することを明らかにしました。これは磁石の電気的制御の四半世紀の研究史で見出されたいずれの現象とも一線を画すものであり、またそれらと比べて極めて小さな電流で誘起できることから、従来技術では実現できない発振器や乱数生成器などの新機能・高効率スピントロニクス素子の実現へと繋がるものと期待されます。

本研究成果は2021年5月13日付(英国時間)で英国の科学誌「Nature Materials」でオンライン公開されました。

図1) 本研究で発見されたノンコリニア反強磁性体のカイラルスピン構造の恒常回転運動と従来研究で見出された現象の比較。縦軸は磁気構造を電気的に制御する場合と磁場で制御する場合に必要な電流密度(JC)と磁場(HC)の比(m0は真空の透磁率)。横軸は磁性体の膜厚。右上に行くほどより体積が大きく、磁場で反転させにくい磁性体を電流で効率的に反転させられることを意味する。本研究で扱ったノンコリニア反強磁性体に加え、従来の研究で扱われてきたコリニア強磁性体、コリニア反強磁性体(図ではフェリ磁性体の結果が示されている)が比較されている。

【用語解説】

注1)カイラルスピン構造
各サイトでの磁気モーメントの方向を一定角度ずつずらした磁気構造。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

●研究に関すること
東北大学電気通信研究所
教授 深見俊輔
電話 022-217-5555
E-mail s-fukami*riec.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

●報道に関すること
東北大学材料科学高等研究所 広報戦略室
電話 022-217-6146
E-mail aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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