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高分子材料の結晶配向をナノスケールで可視化 電子顕微鏡をベースとした新規分析法で高分子の研究・開発に寄与

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所・教授・陣内浩司
研究室ウェブサイト

〇学際科学フロンティア研究所・教授・津田健治
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 結晶性高分子注1)材料の力学強度と密接に関係するラメラ晶の配向注2)をナノスケールの高分解能で可視化することに成功
  • 電子線照射により損傷を受けやすい高分子結晶の高分解能観察に初めて成功

【概要】

プラスチックやゴムとして知られる高分子材料は、耐熱性・成形加工性・柔軟性などの優れた物性を生かして、食品容器・飲料ボトル・フィルム・繊維などに幅広く用いられています。高分子材料中の「結晶の配向」は材料の諸物性に大きな影響を与えますが、可視化する上では従来法の分解能が不十分であること、また、高分子結晶が電子線照射で損傷を受けやすい(電子線ダメージ)ことから、今まで可視化できませんでした。

東北大学 多元物質科学研究所の陣内浩司教授、学際科学フロンティア研究所の津田健治教授らの研究グループは、電子顕微鏡に高感度の検出器を導入することで高分子結晶に対する電子線ダメージを低減し、さらに、顕微鏡の光学系・測定方法を工夫することで、高分子材料中の結晶の配向をナノスケールで詳細に可視化することに成功しました。

この研究成果によって、高分子材料の諸物性(特に力学特性)と結晶構造との相関を調べることが可能になり、既存の高分子製品の性能向上、さらには、環境適合型の高分子材料の開発に寄与すると期待されます。

本研究成果は、令和3年6月23日(米国東部時間)に、米国化学会(American Chemical Society, ACS)の科学雑誌「Macromolecules」にて公開されました。

図1: 結晶性高分子の階層構造の模式図。(a) 結晶構造、(b) 結晶内部での分子鎖の折り畳みの様子、(c) 積層ラメラ構造、(d) 球晶。

【用語解説】

注1. 結晶性高分子: ポリエチレンやポリプロピレンに代表される結晶性の高い高分子。無機物の結晶と異なり図1cに示したように必ず非晶部分を伴うことから半結晶性高分子と呼ぶ場合もある。内部の結晶の配向・量・サイズなどが力学強度・耐熱性・透明性などの物性と密接に関連している。

注2.配向: ここでは、高分子材料中でラメラ晶や高分子鎖が一定方向に配列すること。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 陣内 浩司(じんない ひろし)
電話:022-217-5329
E-mail:hiroshi.jinnai.d4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学 学際科学フロンティア研究所
教授 津田 健治(つだ けんじ)
電話:022-795-4401
E-mail:kenji.tsuda.b6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
電話:022-217-5198
E-mail:press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学 学際科学フロンティア研究所 企画部
鈴木 一行(すずき かずゆき)
電話: 022-795-4353
E-mail: suzukik*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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