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希少な元素を使わずにアルミニウムと鉄で水素を蓄える ―水素吸蔵合金開発の新たな展開を先導―

【本学研究者情報】

〇材料科学高等研究所(WPI-AIMR) 所長 折茂 慎一
〇金属材料研究所 准教授 髙木 成幸
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 従来のようにレアメタルを含むことなく、資源量が豊富なアルミニウムと鉄の合金で水素が蓄えられることを発見
  • 「水素と反応しにくい金属同士を組み合わせる」という新発想に基づき発見
  • 今後の水素吸蔵合金の材料探索の幅を飛躍的に広げ、レアメタルを含まない実用材料の実現に期待

【概要】

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)(理事長 平野俊夫)量子ビーム科学部門関西光科学研究所の齋藤寛之グループリーダー、国立大学法人東北大学(総長 大野英男)の佐藤豊人助教(現 芝浦工業大学)、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長 山内正則)物質構造科学研究所 池田一貴特別准教授らの研究グループは、資源量が豊富なアルミニウムと鉄を組み合わせた合金で水素が蓄えられることを発見しました。従来のように希少な元素を含むことなく、コンパクトに水素を蓄えられる水素吸蔵合金1)ができる可能性が示されました。

研究グループは2013年、アルミニウムと銅の合金で水素貯蔵が可能であることを確かめました。この結果を踏まえ、水素と反応しにくい金属(難水素化金属2))同士でもその組み合わせ方でさらに水素を多く含む新規材料が得られるのではないかと考え、資源量が豊富な元素であるアルミニウムと鉄の合金に着目しました。この合金に水素を吸蔵させる条件について試行錯誤し、高温高圧の水素と反応させることにより、新しい金属水素化物(水素を吸蔵した合金)の合成に成功しました。合金が吸蔵した水素の量はアルミニウムと銅の合金に比べ数倍多く、レアメタルを使ったこれまでの水素吸蔵合金と同等のレベルであることが分かりました。さらに、その構造を詳細に調べたところ、従来の水素吸蔵合金における金属原子と水素原子の並び方の分類に当てはまらない、新しい並び方であることが分かりました。また、合金の表面の性質を変えることでより低い圧力でも水素を取り込めることも分かりました。

今後の研究により大気圧付近で水素を吸蔵する合金の開発が実現すれば、SDGs(持続可能な開発目標)の「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の再生エネルギーの割合拡大の達成への貢献が期待できます。加えて、従来の定石に捉われない水素吸蔵合金開発の可能性を示し、新規材料探索の幅を飛躍的に広げるものと期待されます。なお、本成果に関連する特許は公開済みです(特開2019-199640)。

本研究の一部は、科学研究費補助金新学術領域研究「ハイドロジェノミクス」 (JP18H05513, JP18H05518, 領域代表:折茂慎一)、東北大学金属材料研究所GIMRT共同利用プログラム(18K0032, 19K0049, 20K0022)の支援を受けて実施しました。

本成果は7月29日(木)0:00(日本時間)、『Materials & Design』にオンライン掲載されました。

図1. 従来の水素吸蔵合金による水素吸蔵とその課題、および、本成果のアルミニウム鉄合金

【用語解説】

1) 水素吸蔵合金
水素吸蔵合金は、一般的には金属の原子が作る隙間に水素を取り込み、100℃程度の比較的低温で加熱することにより取り込んだ水素を放出することができる材料です。金属原子間に取り込まれた水素は原子状になっているため、水素吸蔵合金中の水素が占める体積(体積水素密度)は、液体水素よりも高くなります。典型的な水素吸蔵合金としてLaNi5やTiFeなどが挙げられます。

2) 難水素化金属
水素化とは、水素と反応して水素との化合物(水素化物)になることです。周期表において1族(アルカリ金属)から5族(バナジウム族)の元素は常圧付近で水素と反応し水素化物を形成します。これに対して6族(クロム族)から13族(ホウ素族)の元素は水素化のために1万気圧以上の水素が必要な水素化しにくい金属です。ただし、パラジウムは例外的に常圧で水素化物を形成します。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所
准教授 髙木 成幸
TEL:022-215-2094
E-mail: shigeyuki.takagi*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材・報道に関すること)
東北大学 金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144
E-mail:imr-press*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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