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脂肪細胞の糖鎖がインスリンの働きを強くする 糖尿病の病態解明や治療薬開発に期待

【本学研究者情報】

〇医学系研究科機能薬理学分野 准教授 吉川雄朗
研究室ウェブサイト

【研究のポイント】

  • 血糖値の調節に大切な白色脂肪細胞注1において、糖鎖注2の一つであるヘパラン硫酸注3がどのような役割を担っているのかを調べた。
  • ヘパラン硫酸が少ない白色脂肪細胞は、ブドウ糖を取り込む能力が低下していた。また、白色脂肪細胞だけでヘパラン硫酸を減少させたマウスを遺伝子組換え技術で作製・解析したところ、このマウスでインスリン注4の働きが低下し、高血糖となった。
  • 糖尿病の病態解明やヘパラン硫酸を標的とした治療薬開発につながると期待される。

【概要】

ヘパラン硫酸は糖類が直列につながった長い構造を持つ糖鎖で、細胞の表面に存在し、様々な細胞機能を調節することが知られています。これまで、血糖値の調節に重要な白色脂肪細胞におけるヘパラン硫酸の機能についてはわかっていませんでした。東北大学大学院医学系研究科の機能薬理学分野吉川雄朗准教授、松澤拓郎博士研究員らのグループは、白色脂肪細胞におけるヘパラン硫酸の血糖値調節に対する機能を明らかにしました。培養細胞では、ヘパラン硫酸は白色脂肪細胞の機能を向上させて、ブドウ糖を取り込む能力を増やし、マウスでは、白色脂肪細胞にヘパラン硫酸が存在していることで、インスリンの働きが良くなり、正常な血糖値が維持できることを明らかにしました。本研究を発展させることで、糖尿病の病態解明や治療薬開発へと発展することが期待されます。

本研究成果は、2021年7月24日にJournal of Biological Chemistry誌(電子版)に掲載されました。

図1.白色脂肪細胞におけるヘパラン硫酸の役割について
左図:白色脂肪細胞にヘパラン硫酸がない場合。生理活性物質のシグナルが伝わらず、脂肪細胞機能が低下してインスリンの働きが弱まり、血糖値の上昇に繋がります。
右図:白色脂肪細胞にヘパラン硫酸がある場合。生理活性物質のシグナルを強めることで細胞機能が向上し、結果としてインスリンの働きが強まり血糖値の維持に寄与していると考えられます。

【用語解説】

注1. 白色脂肪細胞:脂肪細胞の一つで、皮下や内臓に存在しています。エネルギーを脂肪として蓄えたり、様々なホルモンを分泌したりすることで、体内のエネルギー量を調節している細胞です。

注2.糖鎖:グルコースやガラクトース、グルコサミンなどの糖が連なることによって形成される複合体です。直線状に連なるもの(直鎖)や途中で分岐するもの(分岐鎖)など、様々な構造があります。

注3.ヘパラン硫酸:細胞の外側に存在している糖鎖の一つ。ほとんど全ての細胞に存在しています。

注4.インスリン:血糖値を下げるホルモンで、白色脂肪細胞に作用すると、ブドウ糖の取り込みを増加させます。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科機能薬理学分野
准教授 吉川 雄朗
Eメール:tyoshikawa*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-8032
FAX番号:022-717-8187
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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