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単一強磁性体素子で3次元磁場検出を実現 3次元磁気センサの小型化に向けた新たな設計指針を提示

【本学研究者情報】

〇金属材料研究所 教授 塚﨑 敦
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 強磁性体Fe-Snナノ結晶の薄膜は、外部磁場に依存して巨大な異常ホール効果※1と磁気抵抗効果※2を示すことから、磁気センサの基盤材料として有望です。
  • 異常ホール効果、一方向性磁気抵抗効果※3及び異方性磁気抵抗効果※3を組み合わせることで、平面型単一素子による3次元磁場ベクトルの検出を実証しました。
  • 磁気センサの小型化に向けた素子開発への新たな設計指針となります。

【概要】

磁場ベクトルの大きさと方向を同時に検出する3次元磁気センサは、移動体の位置・速度・角度の検出を可能とします。スマート社会における自動化やロボットの社会実装の進展に伴い、磁気センサの小型化の重要性がますます高まっています。

従来よく用いられる3次元の磁気センサは、3方向の磁場ベクトルを検出するために3つの磁気センサを各方向に配置しており、この構成では小型化や低消費電力化に対する制約がありました。

東北大学金属材料研究所の塩貝純一助教、藤原宏平准教授、野島勉准教授、塚﨑敦教授らの研究グループは、強磁性体Fe-Snナノ結晶薄膜素子を用いて、平面型単一素子による3次元磁場ベクトルの検出を実証しました。

この成果は、3次元磁気センサの小型化の実現だけではなく、強磁性体を使った新たな機能性センシング素子の開発に貢献するものと期待されます。

本研究成果は、2021年10月4日10:00(英国時間)に英国科学誌「Communications Materials」オンライン版に掲載されました。

図1: (a)本研究で使用したFe-Sn薄膜積層構造の断面図、(b)素子構造と電気抵抗測定の配置図。(c)磁場ベクトルの模式図。

【用語解説】

※1 異常ホール効果・半導体ホール素子
電気が流れる試料(電気伝導体)のx方向に電流を流した状態で、z方向に磁場を印加すると、ローレンツ力により電子の運動方向が曲げられ、y方向に起電力(ホール電圧)が生じる現象を正常ホール効果と呼ぶ。半導体では、この正常ホール効果が比較的大きいことから、本効果を用いた半導体ホール素子が磁気センサとして広く用いられている。磁性体では、これに磁化の寄与が加わり、異常ホール効果と呼ばれる。磁化のz成分に比例するホール電圧が生じる。Fe-Snナノ結晶は、半導体の正常ホール効果に匹敵する大きな異常ホール効果を示すため、磁気センサの材料として有望である。

※2 磁気抵抗効果・磁気抵抗効果素子
外部磁場の大きさや角度によって電気伝導体の縦抵抗が変化する現象。磁性体の積層構造では、磁化方向が外部磁場に応答して反転する際に、大きな磁気抵抗効果(巨大磁気抵抗効果)を示すことが知られている。このような磁気抵抗効果を利用して磁場の大きさや角度を検出する磁気センサを磁気抵抗効果素子と呼ぶ。

※3 一方向性磁気抵抗効果・異方性磁気抵抗効果
一方向性磁気抵抗効果は、電気伝導体のx方向に電流を流した状態で、磁場方向あるいは磁化方向の方位角に対し、縦抵抗が360度周期の依存性を示す磁気抵抗効果。一方、異方性磁気抵抗効果は、縦抵抗が180度周期の依存性を示す。このため、異方性磁気抵抗効果のみでは方位角を一意に決定することが困難である。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

◆研究内容に関して
東北大学金属材料研究所 低温物理学研究部門
助教 塩貝純一
TEL:022-215-2089 Email:junichi.shiogai*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
教授 塚﨑敦
TEL:022-215-2085 Email:tsukazaki*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

◆報道に関して
東北大学金属材料研究所 情報企画室広報班
TEL:022-215-2144 FAX:022-215-2482
Email:imr-press*imr.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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