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見えない"閉じたき裂"を冷却し超音波で映像化 - 橋梁・発電プラント・航空機エンジンなどの非破壊評価に新手法 -

【本学研究者情報】

工学研究科 准教授 小原良和
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 通常見えない"閉じたき裂(注1)"を高感度に計測できる超音波(注2)映像法を開発
  • 冷却スプレーを噴射することで、"閉じたき裂"を一時的に開かせながら、表面近傍の欠陥を映像化できる表面波フェーズドアレイ(注3)で計測することに成功
  • 橋梁や発電プラント・航空機エンジンなどの安全性・信頼性の向上に貢献

【概要】

橋梁・発電プラントなどのインフラ構造物や航空機エンジン内の見えない欠陥を可視化する非破壊評価技術は、安心・安全な社会実現のための重要な課題です。最近は、医療分野で開発された超音波フェーズドアレイ(注4)が工業分野の非破壊評価に応用されていますが、これを発電プラントや航空機エンジンなど過酷環境下に晒される部材表面の非破壊評価に応用するには、次の2つの課題がありました。

(1)従来の超音波フェーズドアレイでは、表面直下はノイズの影響があり計測できない
 (2)特に高温に晒された部材は熱によってき裂が閉じる(密着する)ため、計測感度が低下する

東北大学大学院工学研究科の小原良和准教授らの研究グループは、これらの課題を解決する独自の超音波映像法「表面波フェーズドアレイ」を開発し、同大学流体科学研究所の内一哲哉教授らの研究グループとの共同研究により実証しました。エアダスターのような冷却スプレー(注5)を用いて、閉じたき裂を一時的に開かせることで、表面を伝わる超音波(表面波(注6))を用いた高感度計測に成功しました(図1)。これにより、過酷な高温環境に晒される発電プラント、航空機エンジンの部材の非破壊評価や橋梁・トンネルなどの構造物の初期劣化の検知が可能となり、安全性・信頼性の向上に貢献します。

本研究の内容は10月21日に、Elsevier社の学術誌「Ultrasonics」に掲載されました。

図1 発電プラントで問題となっている高温環境で閉じたき裂に対して、冷却スプレーを噴射しながら表面波フェーズドアレイ(左)により映像化した結果(右)

【用語解説】

(注1)閉じたき裂:通常、超音波はき裂面の間の空気層で反射するが、き裂面間が密着した「閉じたき裂」では超音波が透過し、反射が起こらないため、超音波検査で見逃しの要因となる。従来法では検査が困難なき裂。

(注2)超音波:人の耳では聞こえない高い周波数(20 kHz以上)の音。周波数が高い程、直進性に優れるが、減衰の影響も大きくなる。金属材料ではMHz領域(106 Hzオーダー)の周波数が利用される。

(注3)表面波フェーズドアレイ:超音波フェーズドアレイは、縦波(地震で最初に到達する縦揺れに相当)を用いるが、センサの直下は励振電圧の影響で映像化できない。一方、表面波フェーズドアレイは、表面波を用いるため、表面欠陥を高感度に映像化可能。

(注4)超音波フェーズドアレイ:複数の素子を持つアレイセンサとその制御器により、電子スキャンで内部の映像化が可能。医療分野で開発され、近年では工業分野への普及も進みつつある。

(注5)冷却スプレー:エアダスターのようなスプレーであり、噴射箇所を局所的に-55℃まで急速冷却できる。

(注6)表面波:表面に沿って伝わる超音波であり、レイリー波とも呼ばれる。表面の欠陥に感度が高い。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

< 研究に関して >
東北大学大学院工学研究科
材料システム工学専攻 准教授 小原 良和
電話 022-795- 7358
E-mail: ohara*material.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

< 報道に関して >
東北大学工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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