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がん細胞の糖代謝に対する酸素濃度急変動の影響

【本学研究者情報】

〇大学院歯学研究科 教授 髙橋信博
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • がん組織は組織増大に伴う酸素消費拡大などにより低酸素環境となるが、血流増加や播種・転移の際は、酸素濃度の急激な上昇が起きることも想定される。
  • 低酸素環境で培養されたがん細胞を正常酸素濃度環境下に移すと、代謝(酸産生)活性が大きく上昇し、正常酸素濃度環境下で培養したがん細胞の代謝活性よりも高くなった。
  • この酸産生増加は主に乳酸以外の酸であることから、酸化的リン酸化が活性化され、それに伴いエネルギー供給が急増すると示唆された。

【概要】

がん組織は、組織増大に伴う酸素消費の拡大などにより低酸素環境となりやすい一方、血流の増加や転移・播種の際には、周囲の酸素分圧が再び急増することが想定されます。

東北大学大学院歯学研究科口腔生化学分野の髙橋信博教授、鷲尾純平講師および同研究科口腔システム補綴学分野の篠原優太医員らの研究グループは、代表的な口腔がんである口腔扁平上皮がん細胞を用いて、酸素濃度を変えて培養及び糖代謝活性測定を行いました。その結果、低酸素環境(1%)で培養したがん細胞を正常酸素濃度環境に移して糖代謝させると、代謝活性(酸産生活性)が大きく増加し、正常酸素濃度環境下で培養したがん細胞の代謝活性よりも高くなることがわかりました。正常細胞ではこのような現象は見られませんでした。この時に増加した酸は主に乳酸以外の酸であり、酸素濃度の急増が酸化的リン酸化を活性化し、エネルギー供給を急増することが示唆されました。

以上のことから、がん研究においては、周囲の酸素濃度の「変化」の影響を考慮しながら、その複雑な代謝機構を明らかにすることが必要と考えられました。

本研究成果は、令和3年10月22日付でPLOS ONE誌に掲載されました。

図:本研究の概要

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科 
口腔生化学分野
教授 髙橋 信博(たかはし のぶひろ)
講師 鷲尾 純平(わしお じゅんぺい)
電話 022-717-8294 / 8295
E-mail:OEB*dent.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
広報室
電話 022-717-8260
E-mail:den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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