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水素エネルギーシステムの統合型安全管理技術を開発 - 水素エネルギーリスク科学の新展開 -

【本学研究者情報】

〇流体科学研究所 未到エネルギー研究センター 教授 石本 淳
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 高圧水素タンクの材料破壊から水素漏えい・拡散・着火燃焼に至るまでの一連の現象解明に関して、新型の連成解析注1手法の開発に成功した。
  • 水素脆化注2に起因する初期円形欠陥からき裂進展した場合の反応性水素の漏えい特性が明らかとなった。
  • 漏えい水素が着火した直後、火炎反応帯が下流側に移動せず、一時的に上流側に移動するという特異な反応性移流拡散挙動を発見した。

【概要】

水素をエネルギーキャリアとして使用するにあたっては、十分な量のエネルギーを確保するために、水素ガスを圧縮した状態で輸送・貯蔵する必要があります。そして水素を高圧で充填する際の安全性を確保するためには、水素の可燃性限界や最小着火エネルギーなどを十分に考慮した水素ステーションの設計指針が必須であり、また、水素脆化や繰返し応力による材料劣化の影響を考慮した高圧水素タンクの設計が不可欠です。しかし、従来型の水素エネルギーシステムに関する研究では、流体・材料・反応側からのそれぞれ独立細分化された研究が主流であり、水素施設で何らかの欠陥や事故が発生した場合に起こりうる高圧貯蔵タンクや配管の破損現象に対して要請される異分野融合的研究アプローチは、重要性であるにもかかわらず、その複雑さゆえにほとんど行われていないのが現状です。

東北大学流体科学研究所の石本淳 教授らの研究グループは、高圧水素タンクの初期欠陥に起因するき裂伝ぱにより破損した際の反応性水素ガス漏洩の拡散・燃焼現象を調べるために、異分野融合的研究アプローチによって材料構造と反応性乱流多相流を同時に解析する連成解析手法を開発しました。さらに、高圧タンク隔壁の亀裂伝播による破損で漏洩する水素の拡散流動特性と燃焼限界に関連する新しい数値予測手法を開発しました。本研究成果は、各種輸送機用水素貯蔵容器の設計や水素ステーション構成の安全性指針策定・リスクマネージメントに貢献します。

本研究成果は、2021年11月19日付で学術誌``International Journal of Hydrogen Energy" On-line版に掲載されました。

図1 高圧水素タンク隔壁に発生したき裂伝ぱ挙動と着火を伴う反応性漏えい水素の拡散挙動

【用語解説】

注1. 連成解析:2つ以上の物理現象が相互に及ぼす影響を考慮した解析をすることを指します。本研究の場合、破壊力学・流体力学・化学反応の3つの物理化学現象の相互作用を考慮した解析となっています。

注2. 水素脆化:水素原子が金属に吸蔵されることで、金属素材の靭性(じんせい:粘り強さ)が低下し、脆弱となる現象を指します。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関して>
東北大学流体科学研究所 
附属未到エネルギー研究センター長
教授 石本 淳
Tel: 022-217-5271
E-mail: ishimoto*alba.ifs.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

<報道に関して>
東北大学流体科学研究所 広報戦略室
Tel: 022-217-5873
E-mail: ifs-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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