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歯周病菌が血管の修復を妨げる仕組みを発見 -歯周病菌は血管内皮細胞の創傷治癒を遅延させる-

【本学研究者情報】

〇大学院歯学研究科 講師 多田浩之
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 歯周病に罹患すると歯ぐきから出血し、歯を支える歯周組織が破壊されて歯が抜け落ちます。
  • 本研究グループは、歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis(P. gingivalis)*1が血管内皮細胞*2の細胞移動に関わるplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)*3を分解することを発見しました。
  • P. gingivalisによるPAI-1の分解により、血管内皮細胞の移動速度が遅くなることを発見しました。
  • この研究成果は、歯周病菌により血管の修復が妨げられることで血管壁のバリア機能が弱くなる可能性を示唆するものです。

【概要】

歯周病にかかると、歯を支える歯周組織は慢性的な炎症に陥り、歯周ポケットのなかで血管が破れて出血します。歯周病に最も深く関わる病原体P. gingivalisは、ジンジパインというタンパク質分解酵素を分泌し、免疫に関わるさまざまなタンパク質を壊し殺菌されないように抵抗しています。また、ジンジパインはアルツハイマー型認知症の悪化に関わることも明らかにされています。東北大学大学院歯学研究科口腔分子制御学分野の多田浩之(ただ ひろゆき)講師らの研究グループは、歯周病の代表的な原因菌であるPorphyromonas gingivalis(P. gingivalis)が、血管内皮細胞が産生するplasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1)を分解することで、血管内皮細胞の創傷治癒が遅くなることを発見しました。

この研究成果は、2021年11月25日(中央ヨーロッパ時間)に国際科学誌 Journal of Innate Immunity のオンライン速報版に掲載されました。

【用語解説】

*1:Porphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)
歯周病に最も深く関わる病原細菌の一つです。P. gingivalisはジンジパイン、リポ多糖、線毛や莢膜など多彩な病原因子を持ち、歯周組織に慢性炎症を引き起こします。

*2:血管内皮細胞
血管の内腔を覆う細胞。血液と組織の間で酸素や栄養素などの物質交換を行います。また、さまざまな物質を産生して組織や臓器の機能を維持する働きがあります。

*3:Plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1)
PAI-1は組織内において血管内皮細胞の遊走を担い、血管内において血栓を溶解する線溶系を阻害します。PAI-1は主に血管内皮細胞や肝細胞が産生します。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関すること>
東北大学大学院歯学研究科
口腔分子制御学分野 
講師 多田 浩之(ただ ひろゆき)
TEL: 022-717-8306
E-mail: htada*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学大学院歯学研究科広報室
TEL: 022-717-8260
E-mail: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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