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生体内細胞の多数の転写因子の活性測定法を開発 ~経験や病態によって引き起こされる細胞内の変化を 新規オミクス「転写因子活性プロファイル」として解析~

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 教授  安部 健太郎
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 生体内細胞において遺伝子発現を直接制御する多数の転写因子注1の活性を測定する新規技術を開発した。
  • 多くの転写因子の活性を「転写因子活性プロファイル」として評価でき、ゲノム情報と遺伝子発現情報を繋げる新たな情報として活用することが可能になった。
  • 今回開発した方法で生体内細胞の転写因子活性を効率的に測定・解析することにより、転写因子活性の操作を目的とした薬剤や、生活習慣の変更による、新規治療法や予防法の開発につながることが期待される。

【概要】

生物のからだを構成する細胞の性質は、その細胞が発現する多数の遺伝子の発現量のパターンによって決まります。生体細胞内において遺伝子の発現を直接制御する多数の転写因子の活性は、細胞の状態を表す重要な情報です。これまで、転写因子の活性をトランスクリプトーム注2解析から類推する方法はありましたが、生体内細胞においてその活性を直接測定することは困難でした。

東北大学大学院生命科学研究科の安部健太郎教授らのグループは、転写因子活性を測定するためのウイルスベクター注3群を作成し、それらを使用することで、がん細胞などの細胞株や、生体内細胞での多数の転写因子活性を直接計測することを可能にしました。本研究は、生体の発生・発達や感覚入力・学習など様々な生理機能、または生活習慣や病態進行に伴う細胞状態の変化を明らかにし、それらに介入することによる新規治療法や予防法の開発に貢献することが期待されます。本研究成果は、(2月13日の)iScience誌(電子版)で公開されました。

図1:本研究手法により得られた転写因子活性プロファイル例
(左)培養細胞株での50種の転写因子の活性を表す転写因子活性プロファイル。細胞種(HEK293、MCF7、MCF10A)による転写因子活性化状態の違いを表す。(右)マウスの自発的な新規環境探索による空間学習、または強制水泳によるストレス負荷後の大脳皮質における転写因子活性プロファイル変化。円の外側は活性の上昇、円の内側は活性の低下を表す。

【用語解説】

注1. 転写因子
転写因子は遺伝子の発現を制御するタンパク質で、ゲノムDNA上の特定の配列を認識し、そこに直接結合することで,近傍の遺伝子のmRNAの発現を開始・停止したり、その量を増加や減少させたりします。

注2. トランスクリプトーム
細胞が発現する遺伝子の情報を網羅的に表したもの。ゲノムDNAからの転写産物であるRNAの総体を指す。細胞のRNAの塩基配列を網羅的に読み取ることで取得される。

注3. ウイルスベクター
細胞に人為的にDNAなどを導入する際に使用される組み換えウイルス。ウイルス感染による毒性や新規のウイルス増殖をおこさないように人工的に改変されたもの。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 安部 健太郎 (あべ けんたろう)
電話番号: 022-217-6228
Eメール: k.abe*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)


(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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