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大陸衝突の時間スケールを決定 〜大陸衝突にともなう地殻の安定化には約2,600万年必要〜

【本学研究者情報】

東北アジア研究センター(兼 大学院理学研究科地学専攻) 教授 辻森 樹
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 地球上で最大規模の汎アフリカ造山帯において大陸衝突の時間スケールを明らかにした
  • 2つの大陸の衝突にともなう地殻融合・安定化には、約2,600万年必要で、その時間スケールは世界の様々な時代の大陸衝突帯で共通する
  • 大陸衝突による地殻融合の時間スケールは大陸地殻を構成する花こう岩などの低密度の岩石の浮力による

【概要】

約6億年前に起きた汎アフリカ造山運動は、ゴンドワナ超大陸(注1)の形成に関係した複数の大陸衝突を伴う最大規模の造山運動です。アフリカ大陸には東ゴンドワナと西ゴンドワナ大陸の衝突の痕跡が、アフリカ大陸北部から同大陸東部とマダガスカル島西部を経て大陸南部まで連続しており、約6億年前に高温で再結晶した片麻岩や変形した花こう岩が広く分布しています。近年、東アフリカの片麻岩地帯からは、大陸衝突とプレート沈み込みに伴ってマントルの深さで玄武岩が再結晶した高圧変成岩(エクロジャイト)が見つかっています。

東北大学大学院理学研究科地学専攻博士課程前期2020年度卒業の森田 敢さんと同東北アジア研究センター(兼務 理学研究科地学専攻)の辻森 樹教授らの国際研究チームは、大陸衝突帯の深部で形成したエクロジャイトが、大陸衝突後に下部地殻に同化していくまでの温度と圧力の変化と時間差(約2,600万年)を明らかにし、東アフリカで得られた時間スケールが様々な時代の大陸衝突を伴う造山帯で共通することとその原因を計算機シミュレーションによって明らかにしました(図1)。プレートテクトニクス(注2)による大陸の離合集散と超大陸の形成は複数回起きており、アジア大陸も大陸衝突を何度も経験した複合大陸です。本研究成果は、地球のダイナミックな変動の時間スケールの解明につながるものです。

本成果は、2022年2月21日Journal of Petrology誌電子版にオープンアクセス論文として早期掲載されました。

図1. 巨大な大陸衝突にともなう大規模な造山運動と、大陸衝突にともなう地殻融合・安定化について示したモデル図。大陸衝突・プレート沈み込みによってマントルの深さまで持ち込まれた玄武岩質の岩石は周囲のマントル(かんらん岩)よりも高密度の高圧変成岩(エクロジャイト「E」)に再結晶するものの、周囲のマントルよりも低密度の花こう岩質の変成岩の浮力によって「G」の深さまで上昇することで下部地殻に同化する。本研究によって「E」から「G」の深さまでの岩石の移動に約2,600万年必要なことが明らかとなった。岩石の温度圧力の変化をしめした温度圧力図と計算機シミュレーションの結果の一部の他、研究地域(タンザニア西端)の場所、研究対象の岩石の露頭写真、薄片写真、年代測定したジルコンの電子顕微鏡写真も示した。

【用語解説】

(注1)超大陸
地球表層のほぼ全ての大陸が1つに集まってできる巨大な大陸。地球の歴史のなかで約20億年前以降、超大陸の形成と分裂が複数回繰り返されている。ゴンドワナ超大陸は約5億年前に南半球にあった超大陸で、現在のアフリカ大陸、マダガスカル島、インド、スリランカ島、南極大陸、南アメリカ大陸などが集合していた。

(注2)プレートテクトニクス
地球の表面がプレートと呼ばれる何枚かの固い岩板覆われており、各々のプレートの水平移動によって大陸の離合集散やプレートそのものの生産・消費を繰り返してきた地球規模の大きな運動、またはそれを統一的に説明する概念。

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問い合わせ先

東北大学東北アジア研究センター
担当 辻森 樹
電話 022-795-3614
E-mail tatsukix*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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