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天然ゴム合成コア酵素の試験管内再構成に成功 -AI を利用し酵素構造を予測-

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 バイオ工学専攻 准教授 高橋征司
講座ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 天然ゴム生合成装置の最小酵素単位を試験管内で再構成することに成功した。
  • 本研究により、ゴム合成メカニズムの解明へ大きく前進することが期待される。

【概要】

埼玉大学大学院理工学研究科の戸澤譲教授、住友ゴム工業株式会社、金沢大学理工研究域物質化学系の山下哲准教授、東北大学大学院工学研究科の高橋征司准教授らの共同研究グループは、独自の膜タンパク質再構成システムの構築により、天然ゴムを生産する植物パラゴムノキおよびグアユールに由来する特定の2種類のタンパク質因子の組合せにより、天然ゴムの基本骨格となるポリイソプレンを合成する酵素の活性を試験管内で再現することに成功しました。

天然ゴムは、タイヤ製造をはじめとする様々な産業用途に重要な植物由来の資源であることから、長年に渡りその生合成に関する研究が進められてきました。これまでにも、上記の共同研究グループは、パラゴムノキ由来のゴム粒子を材料として、世界に先駆けて天然ゴム生合成装置の構成因子の同定を進めて来ましたが、コア酵素サブユニットの完全な触媒機能の証明には至っていませんでした。今回、埼玉大学のグループでは、これまで培ってきた膜タンパク質合成系に平面膜複合体である「ナノディスク」を利用することにより、完全な試験管内での天然ゴム合成コア酵素の再構成に至りました。さらに、最近開発されたAI技術に基づくタンパク質高次構造予測システムを採り入れることにより、個々のサブユニット同士の会合様式を予測するに至ると同時に、それぞれのサブユニットが独自の膜結合領域を有すること、この膜結合領域の機能欠損が酵素機能喪失を招くことなども明らかにしました。

本成果は、戸澤研究室の博士課程1年生の黒岩風さんを筆頭著者として、2022年3月8日(英国時間)に、英国科学雑誌『Scientific Reports』に公開されました。

図1. タンパク質-ナノディスク複合体の精製と酵素活性測定. A. ナノディスクを用いた膜タンパク質再構成系の概要。 B. 翻訳反応液と精製後のサンプルに含まれるタンパク質泳動の結果。コムギ胚芽抽出液の内在性タンパク質はほとんど除去されており、夾雑物の少ない目的タンパク質-ナノディスク複合体の精製が可能になりました。 C. 酵素活性試験の結果。HRT1とHRBPを共発現させたナノディスクでのみ、基質であるイソプレンの重合反応 が生じていることが分かりました。 D. 酵素活性試験によって生じた反応生成物の解析。イソプレン単位 (炭素数5) ごとのラダー状の反応生成物が検出され、イソプレンの重合反応が生じていることが確認できました。鎖長としては、炭素数75程度までのポリイソプレンが検出されました。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究に関すること>
東北大学大学院工学研究科バイオ工学専攻
准教授 高橋 征司
電話: 022-795-7272
Email: takahashis*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学大学院工学研究科
情報広報室 担当 沼澤 みどり
電話: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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