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産まれてすぐに唾液腺が自律神経に応答し唾液分泌機能を発揮するための発生機構を解明 神経制御可能な器官再生医療への一歩

【本学研究者情報】

〇大学院歯学研究科 准教授 中村卓史
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 神経が器官発生に関与することにより、産まれてすぐに自律神経の指令を受け、唾液分泌機能を発揮する発生機構を発見
  • 唾液腺発生において、副交感神経伝達物質が筋上皮細胞分化を誘導していることを発見
  • 人工器官が即座に神経制御下で機能しうる器官再生法の開発に向けての一歩

【概要】

リラックスして食事をすると適度な唾液が分泌されて嚥下をサポートしてくれますが、緊張状態で食事をすると食べ物がうまく喉を通りません。これらの唾液分泌は自律神経注1がコントロールしており、私たちのからだが唾液分泌を無意識下で制御する上では、唾液腺注2と自律神経の"つながり"がとても重要です。そのためには産まれた直後から、哺乳時などに神経制御下で唾液腺が機能することが必要であり、器官形成後すぐに神経からの指令に応答するための工夫があると考えられていました。東北大学大学院歯学研究科歯科薬理学分野の中村卓史准教授と東北医科薬科大学の研究グループは、副交感神経から分泌される神経伝達物質注3に注目し、唾液腺上皮細胞への作用を調べたところ、唾液を口腔内へ押し出すのに必要な筋上皮細胞への分化を神経伝達物質が促進させることを発見しました。つまり、神経近傍の唾液腺上皮細胞が神経伝達物質により筋上皮細胞へ分化し、器官完成後はその筋上皮細胞が神経の指令を受けやすい位置に配置され、唾液分泌の指令を受け機能することになります。

本研究成果は、神経との"つながり"を人工器官に再構築する手法として再生医療への応用が期待されます。

この研究成果は、2022年4月12日に米国科学誌『Experimental Cell Research』にオンライン掲載されました。

【動画】

マウス発生唾液腺(胎生13.5日齢+48時間器官培養)において神経組織の近傍に筋上皮細胞が分化誘導されている(唾液腺全組織免疫染色結果) 外部サイトへ

【用語解説】

注1 自律神経:心拍や血圧、肺、肝臓、瞳孔、消化管運動の調節に加え、汗、涙、唾液の分泌など、私たちの意識では調節できない生命活動をコントロールしている神経の総称。交感神経と副交感神経の2種類の神経が存在し、2つの神経がバランスをとりながら、拮抗的にそれぞれの臓器のはたらきを制御している。臓器の制御において、交感神経は主に「活動時」に優位になり、リラックスしている休息時は副交感神経が優位になる。自律神経に対し、骨格筋や感覚器に分布し自分の意志によってはたらく神経を体性神経とよぶ。

注2 唾液腺:唾液を外分泌する口腔付属腺。耳下腺、顎下腺、舌下腺からなる大唾液腺と口唇、口蓋、頬粘膜などに存在する小唾液腺がある。ヒトでは耳下腺、マウスでは顎下腺が最も大きい。唾液腺は、唾液を産生する腺房細胞、唾液を口腔内に運ぶトンネル構造の導管細胞、上皮から分化し腺房や導管を収縮させる筋上皮細胞などからなる上皮由来の細胞が間葉細胞に取り囲まれている構造となっている。

注3 副交感神経伝達物質:アセチルコリンは、神経と神経あるいは神経と臓器のつなぎ目で神経の活動を伝える物質である。アセチルコリンは副交感神経以外に、運動神経や交感神経でも神経伝達物質として利用されている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科 歯科薬理学分野
准教授 中村卓史
電話: 022-717-8311
E-mail: takashi.nakamura.d2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科 広報室
電話: 022-717-8260
E-mail: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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