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安全・安心な社会のための超音波検査のき裂測定精度向上に新指針 -複雑な3D超音波散乱現象を解明するレーザスキャン技術の開発に成功-

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 材料システム工学専攻
准教授 小原良和
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • レーザスキャン3次元映像化技術を応用することで、き裂で超音波(注1)が3次元的にどのように散乱するかを捉える計測技術を開発
  • これまで熟練者の経験に頼っていた超音波検査条件の選定を科学的根拠に基づいて最適化し、き裂端部からの散乱波(注2)を効率よく計測できる新たな検査装置開発も可能に
  • 航空機、自動車、発電プラント、橋、トンネル、高速道路など多くの分野で、超音波検査のき裂測定精度を高め、安全・安心で持続可能な社会の実現に貢献

【概要】

構造物や工業製品を壊さずに欠陥計測を行う非破壊評価技術の確立は重要な課題となっています。

東北大学大学院工学研究科の小原良和准教授らの研究グループは以前より、米国ロスアラモス国立研究所との国際共同研究により、超音波フェーズドアレイ(注3)を用いた3次元超音波映像法PLUS*の開発を進めています。この度、計測精度向上の鍵となる散乱波を3次元的に捉える観察法の開発に成功しました。本技術の活用により、これまで熟練者の経験に頼っていた検査を科学的根拠に基づいて最適化し、材料欠陥の新たな超音波検査装置の開発も可能になります。これにより、航空機、自動車、発電プラント、橋、トンネル、高速道路など多くの分野において、超音波検査のき裂測定精度を高め、安全・安心で持続可能な社会への貢献が期待できます。

本研究の内容は5月25日に、英科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

図1 航空機・発電プラントで問題となっている疲労き裂で、超音波が3次元的にどのように散乱するかを直接観察することに成功。実構造物での欠陥に適用することで、き裂端部からの散乱波を効率良く計測できる最適検査条件の選定や新たな検査装置開発につながり、超音波検査の測定精度向上が可能に。

【用語解説】

(注1)超音波:人の耳では聞こえない高い周波数(20 kHz以上)の音。周波数が高い程、直進性に優れるが、減衰の影響も大きくなる。金属材料ではMHz領域(106 Hzオーダー)の周波数が利用される。

(注2)散乱波:超音波が欠陥の「面」から跳ね返ってくる反射波とは異なり、欠陥端部などの「点」を起点として、四方八方に飛び散る(=散乱する)波であり、どの方向にどのような強さで散乱するかは欠陥の微視構造によって複雑に変化する。この散乱波が計測できるかどうかで超音波検査の計測精度が決まるため、散乱現象の解明が不可欠だが、これまでは3次元的な散乱現象を直接観察する計測法がなかった。

(注3)超音波フェーズドアレイ:複数の素子を持つアレイセンサとその制御器により、電子スキャンで内部の映像化が可能。医療分野で開発され、近年では工業分野への普及も進みつつある。

詳細(プレスリリース本文)PDF

*関連プレスリリース
「材料内部の欠陥を3次元で可視化できる高分解能超音波映像法を開発」(2020年9月23日)

問い合わせ先

< 研究に関して >
東北大学大学院工学研究科
材料システム工学専攻
准教授 小原 良和
電話 022-795- 7358
E-mail: ohara*material.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

< 報道に関して >
東北大学工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
電話 022-795-5898
E-mail: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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