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細胞骨格運動の''いきすぎ''を制御する仕組みを解明 ―シグナル分子の濃縮を解消して細胞移動をスムーズに―

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 教授 倉永英里奈
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 上皮細胞がスムーズに集団移動して体の器官を形成していく仕組みの一端を解明しました。
  • ライブイメージング*1とショウジョウバエ遺伝学の手法を用いて、上皮細胞が集団移動するうえで重要なつなぎ替えには、p21活性化キナーゼ3(pak3)が必要であることを示しました。
  • 上皮細胞の接着面がつなぎ替わる際に見られる収縮では、収縮のための因子が濃縮するとアクトミオシン*2の動態が異常になり収縮が途中で停止してしまいますが、pak3があると過剰反応が抑制されて正常なつなぎ替えが起こることが分かりました。
  • 上皮細胞の集団移動をスムーズに継続させる仕組みが明らかになり、組織形成や、創傷治癒などの上皮修復メカニズムの理解に貢献することが期待されます。

【概要】

受精卵の発生過程では、上皮組織内の上皮細胞が同一方向に集団移動してシート状の上皮組織が折りたたまれ、伸長・陥入・移動などの変形を経て複雑な器官を作られていきます。しかし細胞同士の接着を保ったままで上皮細胞が移動したり、同一方向に協調的に動く仕組みの多くは謎のままでした。東北大学大学院生命科学研究科の上地浩之(うえちひろゆき)助教(現MPI Dresden)と倉永英里奈(くらながえりな)教授らは、上皮細胞をスムーズに集団移動させる仕組みを、ショウジョウバエを用いた研究により明らかにし、上皮細胞が集団移動するために重要な、細胞のつなぎ替え(細胞接着面のリモデリング)に必要なタンパク質であるp21活性化キナーゼ3を発見しました。

本研究の成果は、上皮組織の形態形成の原動力となる細胞動態の活性化を、体内で適度に調整する仕組みを明らかにした重要な報告です。

本研究結果は、6月20日付けでNature Communications誌(電子版)に掲載されました。

図:細胞接着面の収縮におけるpak3の役割
(A)pak3ノックダウンにより細胞接着面にアクチンの異常形成がみられる。
(B)本研究のモデル図:収縮に伴うシグナルの濃縮により起こるアクトミオシンの異常形成と解離は、pak3により抑制されて収縮が進行する。

【用語解説】

*1 ライブイメージング:生きた細胞のさまざまな活動を継時観察すること。特にGFPなどの蛍光マーカーを用いて特定の細胞や組織を標識し、蛍光顕微鏡でその動きや変化を詳細に観察することができる。今回は生きた個体において生きた細胞を観察した。

*2 アクトミオシン:アクチン繊維にミオシンたんぱく質が結合した複合体。筋肉や細胞骨格の収縮に必須。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 倉永 英里奈(くらなが えりな)
電話番号: 022-795-6709
Eメール: erina.kuranaga.d1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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