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植物の繁栄を支える菌根菌共生の起源 植物ホルモンであるストリゴラクトンの祖先的機能の解明

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 教授 経塚淳子
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ほとんどの植物は土壌中の養分を効率よく吸収するためにアーバスキュラー菌根菌(AM菌)*1と共生しています。
  • 植物は根からシグナル物質ストリゴラクトン(SL)*2を分泌し、AM菌との共生を促します。
  • SLは種子植物では成長を調節する植物ホルモンとしても働きます。
  • SLのこの2面的機能の起源について、シグナル物質としての機能は陸上植物の共通祖先で進化し、植物ホルモンとしての機能は種子植物の共通祖先において進化したと考えられることを証明しました。

【概要】

約5億年前に陸上に進出した植物にとって、栄養が乏しい陸上で栄えるためにはAM菌との共生が必須でした。現在も80%以上の植物がAM菌と共生しています。植物は、シグナル物質としてSLを根から分泌し、AM菌に働きかけて植物との共生を促しています。SLはまた、植物体内では植物ホルモンとして働き、植物の成長を制御します。このように土壌中でのシグナル物質と植物ホルモンという2面的機能をもつSLですが、これまでその起源は知られていませんでした。東北大学大学院生命科学研究科の経塚教授らのグループは、コケ植物を用いた研究から、陸上植物の共通祖先が獲得した土壌中でのシグナル物質がSLの起源であり、SLが分泌されることでAM菌共生が可能となったこと、さらには種子植物の共通祖先がSL受容体遺伝子を獲得したことで植物ホルモンとして機能するようになったことを実験的に証明しました。本研究は、陸上植物が繁栄し地球を緑の惑星にすることができた理由の端緒を明らかにした画期的な成果です。

本研究結果は、7月8日のNature Communications誌(電子版)に掲載されました。

図:SLは陸上植物の共通祖先で根圏シグナル物質として起源し、種子植物の祖先で受容体ができたことにより植物ホルモンとしても働くようになり、二面的機能を獲得した。

【用語解説】

*1アーバスキュラー菌根菌(AM菌):植物の根に共生する菌類(糸状菌)である。植物の根に侵入した菌糸は細胞内で菌糸を細かく枝分かれさせ、樹枝状体を形成する。AM菌は主にリン酸を植物に供給し、植物から糖や脂質を受け取る。

*2ストリゴラクトン(SL): 植物体内で作られる化学物質。5員環ラクトン(メチルブテノライド)がエノールエーテル結合した部分構造をもつ。これまでに様々な植物種の根浸出液から30種類以上が単離・同定されており、ストリゴラクトンはそれらの総称である。本研究でフタバネゼニゴケから単離されたSLはこれまでに報告されていない新規な構造である。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 経塚 淳子 (きょうづか じゅんこ)
電話番号: 022-217-6226
Eメール:junko.kyozuka.e4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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