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プラズマ技術を利用した植物免疫の活性化 ~環境負荷の少ない植物病害防除技術の開発に期待~

【本学研究者情報】

大学院農学研究科 准教授 安藤杉尋
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • プラズマ技術を用いて空気を材料として生成したN2O5(五酸化二窒素)ガスを植物(シロイヌナズナ)に処理することで、植物免疫のうちジャスモン酸とエチレンを介したシグナル伝達経路が活性化されることを明らかにしました。
  • N2O5ガスを処理した植物では、灰色かび病菌やキュウリモザイクウイルスの感染が抑制されることを示しました。
  • N2O5は水に溶解すると硝酸肥料にもなり、環境負荷の小さい持続可能な農業生産へ展開されることが期待されます。

【概要】

活性窒素種は植物免疫をはじめ、様々な生理現象に重要な機能をもつ反応性の高い物質です。N2O5は活性窒素種の一つですが、従来は合成およびその保管に技術的課題があり、生物に対する生理作用がほとんど知られていませんでした。

東北大学大学院農学研究科・食と農免疫国際教育研究センターの安藤杉尋准教授、高橋英樹教授、宮下脩平助教および、同大学院工学研究科・非平衡プラズマ学際研究センターの金子俊郎教授、髙島圭介助教、佐々木渉太助教らの研究グループは、プラズマ技術を用いた新たな植物病害抑制法を示しました。

金子教授らのグループはプラズマ技術を利用し、高濃度N2O5ガスを生成できる装置の開発に成功しました。そこでこの装置を利用し、安藤准教授と高橋教授のグループがN2O5ガスの植物免疫における機能を解析しました。その結果、N2O5ガス処理によって植物免疫に重要な生理活性物質であるジャスモン酸とエチレンのシグナル伝達経路が活性化され、灰色かび病菌やキュウリモザイクウイルスの感染・増殖が抑制されることが明らかになりました。

N2O5はプラズマ技術を用いて空気のみから低電力で生成できます。また、生成されたN2O5は水に溶けると、植物に肥料成分として利用される硝酸(HNO3)に速やかに変化します。本研究成果は、環境負荷の少ない次世代の植物病害技術として期待されます。

    本研究成果は、2022年6月24日に米国Public Library of Science社が発行する科学誌PLoS ONEに掲載されました。

    図.上段:プラズマを用いたN2O5生成と植物への処理のイメージ。
    下段:N2O5ガスを処理した植物における病害抵抗性誘導のイメージ。写真は葉の組織に菌糸が感染している様子(右側から)。N2O5ガス処理によってこの菌糸の伸展が抑制されます。

    詳細(プレスリリース本文)PDF

    問い合わせ先

    東北大学大学院農学研究科
    食と農免疫国際教育研究センター
    准教授 安藤杉尋
    TEL: 022-757-4297
    E-mail: sugihiro.ando.a2*tohoku.ac.jp
    (*を@に置き換えて下さい。)

    (報道に関すること)
    東北大学大学院農学研究科 総務係
    TEL: 022-757-4003
    E-mail: agr-syom*grp.tohoku.ac.jp
    (*を@に置き換えて下さい。)

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