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音声コミュニケーションの「個性」はどこから生まれるのか -父親の加齢が新生仔マウスの音声行動に及ぼす影響-

【本学研究者情報】

〇医学系研究科発生発達神経科学分野 教授 大隅典子
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 新生仔マウスの超音波発声(USV)注1は、母親マウスとの音声コミュニケーションの一つであり、ヒト新生児における泣き声のモデルとなる可能性がある。
  • 機械学習等を用いた詳細な数理解析により、加齢父由来の新生仔マウスでは、典型的な音声発達のパターンから外れた「非典型」個体が多く観察された。
  • 音声コミュニケーションの発達過程と神経発達障害注2の新たな神経基盤の解明に貢献できると期待。

【概要】

ヒトの新生児の泣き声は生得的なコミュニケーションの一つの形です。新生児の泣き声は子によってバリエーションがありますが、ある種の神経発達障害においては特徴的な異常が観察されるとの報告があります。新生仔マウスも、母親や同腹の仔から離されると、超音波発声により母親の注意を引きます。新生仔マウスの超音波発声は、音声コミュニケーションのための社会的シグナルとして機能しており、ヒト新生児の泣き声のモデルにできる可能性があります。東北大学大学院医学系研究科・発生発達神経科学分野の大隅典子教授らを中心とする研究グループは、父加齢がマウスの音声コミュニケーションの初期発達に与える影響を、機械学習を用いた分類方法により詳細に解析しました。その結果、父加齢により、仔マウスの超音波発声の回数と持続時間が減少し、鳴き声のパターンが変化することを明らかにしました。さらに、加齢父由来の仔マウスには、典型的な音声発達の筋道から外れた「非典型」個体が多くいることが示されました。本研究は、父親の加齢が次世代の初期音声コミュニケーションの発達へ与える影響を解明した初めての報告です。

本研究成果は、2022年8月10日(米国東部標準時、日本時間8月10日)iScience誌(電子版)に掲載されました。

図. 研究の概要
父加齢が次世代マウスの音声コミュニケーションの初期発達に与える影響。若い父から生まれた仔マウスは、生後の発達過程において、音声レパートリーが豊富で(定型的音声発達)、収束的な発声特性を示すのに対し、加齢父から生まれた仔マウスは、レパートリーが少なく、より発散的な発声パターンを示す(非定型的音声発達)。

【用語解説】

注1. 超音波発声:生後1〜2週間の齧歯類(マウスおよびラット等)が超音波領域で発する音声。母性行動を誘発する音声コミュニケーションとして知られている。自閉スペクトラム症で見られる言語コミュニケーション異常のモデルとして、母仔分離により引き起こされる仔マウスの超音波発声が近年、着目されるようになってきた。

注2. 神経発達障害:脳の発生発達過程において、なんらかの機能的な問題が関係して生じる障害の総称。自閉症スペクトラム症、注意欠如・多動症、知的障害、学習障害などが含まれる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

研究紹介動画【父加齢は子どもの非定型発達のリスクとなる】外部サイトへ

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科発生発達神経科学分野
教授 大隅 典子
電話番号:022-717-8203
Eメール:osumi*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-8032 
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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