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電子デバイスの排熱制御に向けた「スピン梯子系銅酸化物」の配向成膜技術を開発 ─ 半導体シリコン基板にも低温で容易に作製 ─

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 応用物理学専攻
助教 寺門信明
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • スピン梯子(はしご)系銅酸化物*1 を配向成膜する技術を開発
  • 高熱伝導な梯子面を基板に対して平行に堆積することが可能
  • スパッタリング法*2 を用いてガラスやシリコンへの低温成膜(約400℃)が可能
  • 電子デバイスの効率的な排熱やその再利用を可能にする次世代熱制御(マネジメント)*3デバイスへの応用に期待

【概要】

多量の熱を発生する電子デバイスは排熱が機器の故障や誤動作の原因になります。 電子デバイスの高集積化が進むにつれ、この問題はますます深刻になります。そのため、放熱や断熱、遮熱を制御する熱マネジメントが重要な課題です。

東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻 藤原研究室の渡辺祥太氏(研究当時:博士前期課程)、寺門信明助教(研究当時:JST さきがけ研究者兼任)、藤原巧教授らは、同大学院工学研究科技術部の宮崎孝道博士、東京電機大学の川股隆行准教授(研究当時:東北大学助教)らとの共同研究により、次世代の熱マネジメント技術への応用が期待できる磁性原子が梯子(はしご)状に配列したスピン梯子系銅酸化物La5Ca9Cu24O41を配向成膜することに成功しました。今回開発した技術は、簡便なスパッタリング法を用いてガラスや単結晶シリコン上への低温成膜(約400℃)が可能であるうえ、結晶中で高熱伝導な梯子面を基板に対して平行に堆積できるため、異方的かつ効率的な排熱やその再利用を可能にする次世代熱制御デバイスへの応用が期待されます。

本研究成果は、オランダの学術出版大手エルゼビアが発行する表面科学に関する国際学術誌「Applied Surface Science」に2022年8月9日にオンライン掲載されました。

図. スパッタリング法によって単結晶シリコン上に成膜したLa5Ca9Cu24O41。(a) 単位構 造。c 軸方向に沿って梯子面が寝ている。(b) 断面の透過型電子顕微鏡像。(c) 電子線回折パターン。X 線回折や電子線回折パターンなどの結果から梯子面が基板に平行に堆積した配向構造を持つことが分かった。

【用語解説】

*1 スピン梯子系銅酸化物:梯子状に配列した銅イオンを持つ層状化合物(図1)。梯子に沿ってマグノン*5が熱を輸送する。

*2 スパッタリング法:薄膜製造法のひとつ。プラズマ化したイオンを薄膜の元となるターゲット試料に衝突させ、飛び出した原子やイオンを基板に堆積させる。

*3 熱制御:熱の流量、方向、温度分布などを時間的、空間的に操る技術。

*5 マグノン:電子スピンを小さな棒磁石とすると、それを半回転させた状態。磁石が作
る波(スピン波)を量子力学的に扱った準粒子として扱われ、電子スピンの配列上
を動く。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

< 研究に関して >
東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻
助教 寺門 信明(テラカド ノブアキ)
電話 022-795- 7965
E-mail nobuaki.terakado.c8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻
教授 藤原 巧(フジワラ タクミ)
電話 022-795-7964
E-mail takumi.fujiwara.b1*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

< 報道に関して >
東北大学工学研究科情報広報室 担当 沼澤 みどり
電話 022-795-5898 E-mail eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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