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新規ミトコンドリア病モデルマウスの作製に成功 〜基礎研究と創薬研究への応用に期待〜

【本学研究者情報】

〇加齢医学研究所モドミクス医学分野 日本学術振興会特別研究員(PD) 谷春菜
加齢医学研究所モドミクス医学分野 教授 魏范研
研究室ウェブサイト

【概要】

ミトコンドリアは、細胞内のエネルギー工場として知られる細胞小器官です。生物の遺伝情報であるDNAのほとんどは細胞内の核に存在していますが、ミトコンドリアにも独自のゲノムであるミトコンドリアDNAが存在しています。このミトコンドリアDNAに突然変異が生じると、ミトコンドリア病と呼ばれる代謝性疾患の原因となることや、さらに最近では、糖尿病、がん、老化などの原因になる可能性が示唆されています。ミトコンドリア病の症例が報告されてから 50 年以上の年月が経ちますが、ミトコンドリアDNAに病原性変異を有するモデル動物の作出例はごくわずかしかありません。そのため、ミトコンドリア病やミトコンドリアDNAの突然変異が関与するとされるさまざまな疾患の発症機構の解明はもとより、治療法の探索や創薬開発は進んでいないのが現状です。

本研究では、ミトコンドリアDNAの中のtRNALeu(UUR)遺伝子領域に病原性点突然変異を有するモデルマウスを、世界に先駆けて樹立することに成功しました。このモデルマウスでは、ミトコンドリア病の症例と類似した病態だけでなく、ミトコンドリアDNAの変異で生じるとされる糖尿病や肝機能障害が再現されていました。このようなモデルマウスは、ミトコンドリアDNA変異に関する研究に資する貴重な動物資源であり、将来的には、ミトコンドリア病や多様なミトコンドリア関連疾患の治療法の探索や治療薬開発に役立つことが期待されます。

図 本研究の概略図
mtDNAのtRNALeu(UUR)領域にA2748G変異を有するモデルマウスを作出した。A2748G変異はヒトA3302G変異と相同であり、ヒト患者ではミオパチー(筋疾患)や高乳酸血症などが主な臨床症状である。A2748G変異は1) RNAプロセシングを阻害することで、2)ミトコンドリア内に未成熟なRNA前駆体を蓄積させ、3) MT-ND1遺伝子の発現量が低下し、4)呼吸酵素複合体Iの顕著な活性低下を引き起こす。こうした分子機序により誘導されるミトコンドリア機能不全を介し、10ヶ月齢のモデルマウスでは、高血糖、高乳酸血症、インスリン抵抗性、肝機能障害を伴う代謝疾患を呈する。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

東北大学加齢医学研究所広報情報室
E-mail:ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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