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腸の活発な運動で促進される糖質吸収の可視化に成功 ~肥満や糖尿病、腸内細菌に関する栄養吸収メカニズムの解明に期待~

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 ファインメカニクス専攻
准教授 菊地謙次
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 蛍光色素で標識したグルコースを用いて腸における栄養吸収の可視化に成功
  • 線虫の腸内流動と腸壁における栄養吸収を関係付ける力学法則を発見
  • 腸の活性・疾患や腸内細菌に関係する栄養吸収メカニズムの解明に期待

【概要】

食物から栄養を得る生き物にとって、腸における食物消化と栄養吸収は重要な生命活動の一つです。腸内の流動が速く、また腸の表面積が大きい場合にはグルコース(糖質の一種、ブドウ糖)・ビタミン・ミネラルなどの栄養素の吸収が促進されますが、反対に腸内の流動物の粘度が高く流動が遅い場合にはグルコーストランスポーター(注1)におけるグルコースの取り込みやインスリン分泌の減少が知られています。しかし、腸内における栄養の取り込みと腸内の流動の関係は生理学的・薬理学的に重要であるにもかかわらず力学的メカニズムの詳細はこれまで明らかにされていませんでした。

東北大学大学院工学研究科の鈴木雄貴博士(研究当時、後期博士課程在籍)、菊地謙次准教授らの研究グループは、モデル生物(注2)である線虫(C. elegans) (注3)を用いて、排便モータープログラム(DMP)(注4)による腸内の流動と腸壁からのグルコース吸収について、流体力学ではよく知られたTaylor分散(注5)によって腸内で栄養物質が撹拌され、腸壁での栄養吸収を助長していることを発見しました。この発見は、腸の活性・疾患や腸内細菌に関する肥満や糖尿病などにおける栄養吸収に関する力学的メカニズムの解明につながる成果です。

本研究成果は、2022年9月21日に、「Scientific Reports」に掲載されます。

【用語解説】

注1 グルコーストランスポーター
グルコース輸送体と呼ばれる細胞外および細胞同士のグルコースの輸送を司る膜貫通型タンパク質。腸内腔から腸細胞へはナトリウム‐グルコース共輸送タンパク質によって能動的に輸送され、また細胞間においてはグルコースの濃度勾配によってグルコース輸送タンパク質を通じて受動的に輸送される。

注2 モデル生物
生物の普遍的な基本原理や、人間自身を知るための非常に優れた実験系として利用されている生物のこと。

注3 線虫(C. elegans)
生命科学研究において広く使われているモデル動物で、多細胞生物として初めて全ゲノム配列が解読された種。「究極のモデル生物」とも称されている。

注4 排便モータープログラム(DMP)
Defecation Motor Programの略称であり、後体幹筋収縮(pBoc)、前体幹筋収縮(aBoc)、排出筋収縮(E.p.)の3つの異なる運動ステップによって行われる排便運動を指す。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科ファインメカニクス専攻
東北大学高等研究機構
准教授(東北大学ディスティングイッシュトリサーチャー)
JST創発研究者
菊地 謙次
TEL: 022-795-5029
Email: k.kikuchi*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室 担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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