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波がプラズマの熱を運ぶプロセスを世界で初めて観測 ―核融合プラズマの自己加熱の研究が大幅に進展―

【本学研究者情報】

〇大学院理学研究科 地球物理学専攻
教授 加藤雄人(かとう ゆうと)
研究室ウェブサイト

【概要】

核融合発電では、高温のプラズマ※1中の核融合反応で発生した高エネルギー粒子がプラズマを加熱して、更なる核融合反応を促進させることが不可欠です。このプラズマの自己加熱のためには、高エネルギー粒子が作り出した波でプラズマを加熱できるかがポイントとなっています。核融合科学研究所の居田克巳教授、小林達哉助教、吉沼幹朗助教、東北大学の加藤雄人教授らの研究グループは、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置 (LHD)※2において、プラズマの速度分布の時間変化を詳細に計測し、高エネルギー粒子が作り出した波が、ランダウ減衰※3と呼ばれるプロセスによって熱を運び、プラズマを加熱していることを世界で初めて観測しました。今後、本研究成果が基盤となって、核融合発電実現に向けたプラズマの自己加熱の研究が大きく加速するのみならず、地球磁気圏におけるプラズマ加熱の研究も進展すると期待されます。

この研究成果をまとめた論文が英国の科学雑誌「コミュニケーションズ・フィジックス」に9月28日に掲載されました。

図 熱が電磁波によって運ばれ、高速の粒子ビーム(赤線)の減速とプラズマ粒子(緑線)の加熱が同時に起こる様子。電磁波の発生に伴い、粒子が加速されたことによって速度分布の歪みが観測された。

【用語解説】

※1 プラズマ
固体、液体、気体に次ぐ物質の第4の状態。高温のため原子が電子とイオンに分離し、電子とイオンが自由に運動できるようになった状態。

※2 大型ヘリカル装置(LHD)
核融合科学研究所の主実験装置で、我が国独自のアイデアに基づくヘリオトロン磁場を用いた世界最大の超伝導ヘリカル型のプラズマ生成装置。LHDとはLarge Helical
Device の略。1998年3月から実験が開始された。トカマク型のプラズマ生成装置と磁場構造が異なっており、特徴を生かしたユニークな研究を行うことができる。

※3 ランダウ減衰
プラズマ振動が荷電粒子にエネルギーを与えて減衰すること。1946年ソ連の理論物理学者 L. D.ランダウによって、荷電粒子の速度分布がマクスウェル・ボルツマン分布ならば、プラズマ中の縦波は必ず減衰することが指摘された。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

<研究内容について>
東北大学大学院理学研究科 地球物理学専攻
教授 加藤 雄人(かとう ゆうと)
電話: 022-795-6516
E-mail: yuto.katoh*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道関係のお問い合わせ>
東北大学大学院理学研究科 広報・アウトリーチ支援室
電話: 022-795-6708
E-mail: sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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