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コロナ禍でも救急医療体制は最低限維持されていた - 新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言下での急性心筋梗塞救急医療-

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科循環器内科 教授 安田聡
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 新型コロナウィルス感染症の流行が、急性心筋梗塞を含めた救急医療体制に影響を及ぼしたことが世界中で報告されている。
  • 新型コロナウィルス感染症の流行による日本の急性心筋梗塞救急医療体制への影響を多施設大規模研究で検討した初めての研究。
  • 来院から閉塞血管の血流回復までに要した時間は延長していたが、心不全兆候が見られた患者では延長しておらず、救急車利用率や冠動脈カテーテル治療注1の施行率、院内死亡率は低下していなかったことから救急医療体制は最低限維持されたと考えられた。

【概要】

急性心筋梗塞は、冠動脈が血栓で詰まることで発症し、その治療には可能なかぎり速やかに詰まった血管の血流を回復させるために緊急で冠動脈カテーテル治療を行うことが重要です。東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授らの研究グループは、新型コロナウィルス感染症による1回目の緊急事態宣言下の2020年4月7日から5月25日において、「宮城県心筋梗塞登録研究」(県下45施設参加)のデータを用いて、急激な感染拡大の救急医療体制への影響を詳細に検討しました。その結果、来院から閉塞血管の血流回復までに要した時間(Door-to-device time)注2は過去3年間と比較して延長していましたが、より重症な、心不全を合併した患者では変わらなかったことを明らかにしました。さらに、救急車利用率や冠動脈カテーテル治療の施行率も低下しておらず、院内死亡率も同等であったことから、救急医療体制は影響を受けたものの最低限維持されたと考えられました。

本研究は、研究成果は2022年9月16日に、IJC heart and vasculature誌にオンライン掲載されました。

図1.過去3年間(2017年~2019年)と比較した、新型コロナ感染症による緊急事態宣言下(2020年4月7日~5月25日)での急性心筋梗塞の救急医療 新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言下では、過去3年間と比較して急性心筋梗塞患者に対するDoor-to-device timeが延長しましたが、発症から病院来院までに要した時間の延長や救急車使用率、冠動脈カテーテル治療施行率の低下は認めませんでした。

【用語解説】

注1. 冠動脈カテーテル治療:心臓カテーテル検査で冠動脈に造影剤を注入して血管の狭窄度を評価した後に、閉塞した血管を認める場合に治療へ移行する。閉塞部位の血栓吸引やバルーンでの拡張後に、ステントと呼ばれる金属の網状の筒を用いて狭窄部位を確実に広げて血流を改善させる場合が多い。

注2. 来院から閉塞血管の血流回復までに要した時間(Door-to-device time):患者が病院へ到着(door)して急性心筋梗塞と診断された後に、緊急で準備を行って心臓カテ-テル検査で閉塞した冠動脈を同定して、医療器具(device)を用いて血栓吸引やバルーンでの拡張を行い、血流を回復させるまでに要した時間のこと。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
 東北大学大学院医学系研究科循環器内科
 教授 安田 聡(やすだ さとし)
 電話番号:022-717-7152
Eメール:syasuda*cardio.med.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
電話番号:022-717-8032
FAX番号:022-717-8187
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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