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情報を電源フリーでワイヤレス送信できる微小荷重センシングシステムを開発 ―曲げ振動を利用して風邪コロナウイルスの検知に成功―

【本学研究者情報】

〇環境科学研究科 教授 成田史生
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 薄くて軽い鉄コバルト/ニッケル(Fe-Co/Ni)クラッド鋼板(注1を開発し、曲げ振動で発生するエネルギーを10 mW/cm3以上の電力に変換
  • 曲げ振動で得られた電力で情報を5分に1回送信。永久磁石でバイアス磁場(注2を印加すると、10秒に1回の情報送信が可能
  • クラッド鋼板表面へのタンパク質CD13(アミノペプチダーゼN)固相化に成功し、曲げ振動を利用して風邪コロナウイルス(HCoV-229E)(注3の捕捉を確認
  • 荷重の微量な変化を電源フリーでワイヤレス送信するセンシングシステムに期待

【概要】

自然界に広く存在する未利用の運動エネルギー(振動、衝撃など)から電気エネルギーを回収する環境発電が注目を集めています。東北大学大学院環境科学研究科(工学部材料科学総合学科)成田史生教授のグループと山梨大学大学院総合研究部 井上久美准教授のグループは、東北特殊鋼株式会社と共同で、逆磁歪効果を示す厚さ0.2mmのFe-Co/Niクラッド鋼板の表面にHCoV-229E捕捉タンパク質CD13を固相化させる技術の開発に世界に先駆けて成功しました。

また、このFe-Co/Niクラッド鋼板に整流蓄電回路と無線機を組み合わせ、曲げ振動で情報をワイヤレス送信できるシステムに改良し、クラッド鋼板による風邪コロナウイルス捕捉による共振周波数変化が確認できました。これによりクラッド鋼板に風邪コロナウイルスが吸着すると、振動発電量が減少し、情報送信間隔が変化してウイルスの捕捉を知ることが可能となります。

本研究成果は、2022年11月30日、Sensors and Actuators A: Physical のVolume 349、 Issue 1に掲載されました。

図1  Fe-Co/Niクラッド鋼板の曲げ振動による蓄電とワイヤレス送信

【用語解説】

注1 クラッド鋼板:
異なる金属を用途に合わせて接合し、一枚の板にしたもの。本研究では、磁場の印加によって伸びる鉄コバルトと縮むニッケルとを熱拡散接合し、曲げ変形で磁束が一定の方向に変化する現象を利用している。

注2 バイアス磁場:
安定した出力を得るために、あらかじめ磁歪材料に与えておく外部磁場。

注3 HCoV-229E:
人々に日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus: HCoV)の一つ。他にHCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1があり、HCoVの流行は冬にみられるが、229Eは春と秋にも検出されるようである。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

【問い合わせ先】
<研究に関すること>
東北大学大学院環境科学研究科
教授 成田史生
TEL: 022-795-7342
E-mail:narita*material.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

<報道に関すること>
東北大学大学院環境科学研究科
情報広報室
助手 物部 朋子
TEL: 022-752-2241
FAX: 022-752-2236
E-mail:tomoko.monobe.d4*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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