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ミヤコグサが日本全土に分布域を広げた要因 多年生植物の低温耐性機構の解明

【本学研究者情報】

〇生命科学研究科 教授 佐藤修正
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 多年生の植物の低温耐性についての知見は、これまでは限られていた。
  • 多年草であり、日本に自生するミヤコグサの集団を用いた東北大学大学院生命科学研究科付属の湛水生態系野外実験施設での実験で、越冬性に関わる2種類の遺伝子を同定した。
  • 同定した遺伝子は、冬季低温下で新芽を形成するために重要で、その変異のパターンにより、低温によって遺伝子の発現量が上昇するようになり、越冬性の獲得につながったことが明らかとなった。
  • 越冬性が環境適応にとって重要な要素となる多年生の植物で低温耐性に重要な役割を果たす遺伝子の制御機構を同定した。

【概要】

植物の低温耐性についてはこれまで1年生植物のシロイヌナズナを中心に研究が進められており、越冬性が環境適応に重要な要因となる多年生の植物での知見は限られていました。東北大学大学院生命科学研究科の佐藤修正教授らとオーフス大学(デンマーク)、ノースカロライナ州立大学(アメリカ)の国際共同研究グループは、日本全土に自生するマメ科のミヤコグサ集団を東北大学の圃場で栽培し、越冬性の表現型を指標にした解析を行い、2つの受容体様キナーゼ(*1)遺伝子が越冬性に関与することを見出しました。本研究ではこれらの遺伝子が、氷点下の気温にさらされた後の新芽の形成に重要な役割を果たすこと、その塩基多型により、低温による発現誘導能を獲得したことが低温環境への適応が必要な地域への分布域の拡大に寄与したことを明らかにしました。多年生植物の低温耐性に普遍的な受容体様キナーゼが関与していることを明らかにしたことにより、関連作物の育種への応用も期待されます。

本研究結果は、2022年11月30日にPlant Physiology誌に掲載されました。

図1. 冬季野外栽培実験の表現型
冬季に温室で4週間生育させた個体を、4週間野外で栽培した後再び温室に戻すと、野生型は2週間で新芽の形成が誘導されるがLjFER遺伝子、LjLecRK遺伝子の変異体は新芽の誘導が起こらない。

【用語解説】

*1 受容体様キナーゼ:
シグナルの受容に関与する細胞外のドメインとシグナルの伝達に関与する細胞内のキナーゼドメイン(リン酸化を触媒するドメイン)を持つ膜貫通タンパク質で、植物において広範囲の生理学的反応を制御し、大きな遺伝子ファミリーを形成している。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 佐藤 修正 (さとう しゅうせい)
電話 022-217-5688
E-mail shusei.sato.c1*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
広報室
高橋 さやか (たかはし さやか)
電話 022-217-6193
E-mail lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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