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直径数百ミクロン以下の多機能性カテーテルを開発 ─ アクチュエータ、センサ、流路、光路、カメラの 一体化が可能に ─

【本学研究者情報】

〇学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部 助教 郭媛元
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 多機能ファイバ1)と形状記憶合金ワイヤ2)を複合し、熱延伸技術3)による多機能性カテーテルの機能の集積化と構造の微細化に成功した
  • 血管や気管支をモデルとしたチューブ状の分岐構造体の内部でも、適用が可能なセンサ機能を有する能動カテーテルを開発した
  • 血流成分をモデルとした実験系において、微小流路の内部であっても生体分子の高感度の濃度測定を可能とした

【概要】

現在の医療技術においては、様々な機能を有するカテーテルと呼ばれる医療器具が治療や生体検査で広く活用されています。これらは基本的に細長い形状をしており、生体内の血管や気管支のような複雑に分岐した微細な管状組織に対して使用されています。しかし、医療用器具として有用な複数の機能(屈曲変形、電気化学センサなど)をまとめて付与したい場合には、個別に単一性能のカテーテル素子を多段階に積層させる従来の製法では線径が太くなり大型化してしまう傾向があります。このため生体内の目標部位にサイズとして適合できない場合には、必要最低限の機能しか選択する事ができません。

東北大学学際科学フロンティア研究所の郭媛元助教と佐藤雄一研究員は、「金太郎飴」の作製方法と類似している熱延伸プロセスを活用し、繊細かつ柔軟な繊維 (ファイバ)として線径を数百ミクロン程度にまで抑制しながら、屈曲変形および神経伝達物質をモニタリングできる多機能性カテーテルの開発に成功しました。またこれらの有効性を、分岐した血管と血流をモデルとした実験系で確認しました。

本研究成果は、工学分野における米化学会の専門誌である『ACS Applied Engineering Materials』に2023年1月23日付で掲載されました。

概念図:形状プログラム可能な多機能ファイバを用いたスマートカテーテル

【用語解説】

1) 多機能ファイバ
直径100〜500 µm程度のポリマー製繊維の中に、導電線・光路・流路・電気化学信号・機械駆動用ワイヤなど、さまざまな要素を操作したり測定したりするのに必要な構造を集積したファイバ。

2) 形状記憶合金ワイヤ
直径50〜200 µm程度の形状記憶を有する主にNi-Ti合金で構成されたワイヤ。電気炉での加熱による形状記憶化処理により螺旋状の屈曲構造などの形状を記憶させることができ、これを直線に変形させた状態で多機能カテーテル内部に芯材として導入させておくことで、通電によるジュール熱などを利用してカテーテル先端を変形させることができる。

3)熱延伸技術
加熱しながら引き伸ばす技術。利用できるのは単一の材料に限定されず、金属・複合材・ポリマーなど多種類を組み合わせることが可能である。「金太郎飴」を作る方法と似ており、最初に、必要な多種類の材料を組み合わせた大きいプリフォームという成形物を作り、これを加熱しながら引き伸ばすことによって、電気・化学・光などの機能をマイクロからナノレベルで集積した、長さ数千メートルのファイバを作製することができる。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関して)
東北大学大学院学際科学フロンティア研究所
新領域創成研究部
助教 郭媛元 (Yuanyuan Guo)
電話: 022-795-5768
E-mail:yyuanguo*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)


(報道に関して)
東北大学大学院学際科学フロンティア研究所
企画部
特任准教授 藤原 英明 (ふじわら ひであき)
電話: 022-795-5259
E-mail:hideaki*fris.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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