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ストレスによる精神症状の個体差は記憶に由来する ―記憶が精神疾患を誘発するメカニズムを解明―

【本学研究者情報】

〇大学院薬学研究科 薬理学分野
教授 佐々木拓哉
研究分野ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 精神的ストレスの後に、精神症状(うつ病など)が現れる原因として、脳の記憶が重要であることをマウスを用いて示しました。。
  • 記憶を強化するための海馬の活動が、精神症状の個体差に重要であることがわかりました。これを抑制するには、運動が効果的でした(気晴らし効果)。
  • 記憶という観点から、ストレスやこころの状態を考える契機となり、現代社会における精神衛生の向上への寄与が期待されます。

【概要】

日常、私たちは多くの精神的ストレスを受けており、これが過剰になると、不安やうつ症状が生じます。このようなストレス誘発性の精神症状には、大きな個人差(個体差)がありますが、その原因は未解明でした。

東北大学大学院薬学研究科の佐々木拓哉教授と佐々木(久我)奈穂子研究員、東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授らは、脳のメカニズムとして、「海馬の記憶」に着目し、精神的ストレスに曝されたマウスから、海馬の脳波を記録しました。その結果、ストレス負荷を経験した後に、さらにその記憶を脳内に固定するために重要な脳波(リップル)を多く発生させたマウスほど、うつ様の精神症状を生じやすいことがわかりました。また、こうしたリップルの発生頻度を、ストレス後の運動などによって軽減すると、精神症状の発症が抑制されることがわかりました。

本研究成果は、ストレス応答性の精神症状を記憶能力や性格傾向の側面から考える重要な契機となります。また、運動が精神衛生上の良い効果をもたらす理由を説明できる研究成果であり、さらに検証を重ねることで、現代社会の精神衛生の向上への寄与も期待されます。

 この研究成果は、2023年4月20日(木曜日)に『Nature Communications』誌に掲載されました。


本研究成果の概要図

 (左)黒いマウスが白いマウスからストレス攻撃を受ける。ストレスを受けた海馬の細胞が活性化され、記憶として蓄えられる。(中)その後の休憩中でも、黒いマウスの海馬では同じ細胞が継続して再活性化し、記憶が固定される。この際、リップル(脳波)が発生する。(右)この活動が繰り返されると、ストレス誘発性の精神症状が生じる(上段)。一方で、運動などにより、記憶の固定を抑制できれば、発症が予防される(下段)。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科 
教授 佐々木拓哉
TEL 022-795-5503
E-mail takuya.sasaki.b4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科 
総務係
TEL 022-795-6801
E-mail ph-som*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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