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飢餓を乗り切り命を守る肝臓からの仕組みを解明 ‐血糖値上昇時の食欲亢進にも関与‐

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野 教授 片桐秀樹
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • マウスを用いて、飢餓の際に生命を守る仕組みを発見し、肝臓が非常に重要な役割を果たしていることを世界で初めて解明しました。
  • 肝臓は、カロリー摂取の減少を血中インスリン濃度の低下を通じて感知し、血液中にsLepR注1を放出することで、カロリー消費を節約し食欲を増やしているという機序を解明しました。
  • この仕組みは、糖尿病の患者さんの血糖値が高い時(肝臓でインスリンが効いていないとき)にも働いてしまい、血液中のsLepR濃度をあげていることを見出しました。sLepRは食欲亢進の要因の一つと考えられます。

【概要】

生物は食べ物が足りない状況になると、無駄なカロリーの消費を減らしたり、食欲を増やしたりして生命を維持しますが、どのような仕組みでこのような反応が生じるのかは、十分に分かっていませんでした。

東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野および東北大学病院糖尿病代謝科の高橋圭(たかはし けい)助教、片桐秀樹(かたぎり ひでき)教授らのグループはマウスを用いて、肝臓がキーとなることで飢餓の際に必要以上のカロリー消費を抑え、食欲を高めることで、生命を守る仕組みを発見しました。この体に備わった仕組みには、肝臓が非常に重要な役割を担っていることを世界で初めて解明しました。また、この仕組みは糖尿病で血糖値が高いときにも働いていることがわかり、食欲亢進の要因の一つと考えられます。

本研究は生命を維持する仕組みの解明のみならず、糖尿病患者さんが食べ過ぎることを防ぐ方法への応用にもつながることが期待されます。

本研究成果は、2023年4月27日午前11時(現地時間、日本時間4月28日午前1時)国際科学誌Cell Reports誌(電子版)に掲載されました。

図1.通常マウス(グラフでは黒線)と肝臓からsLepRを分泌できないマウス(グラフでは青線)に対し、食物を減らす実験をしました。肝臓からsLepRを分泌できるマウスの生存率は100%でしたが、肝臓からsLepRを分泌できないマウスの生存率は最終的に55%になりました。このマウスでは、カロリー不足の状態にもかかわらずsLepRによるカロリー消費が節約できなくなっており、生存率が低下した原因と考えられます。

【用語解説】

注1. sLepR:
sLepRは、注2で後述するレプチンを捕捉し、レプチンの働きを止めるタンパク。図左のように、sLepRがない場合、レプチンは脳にあるレプチン受容体に結合し、注2で後述する働きをします。しかし、図右のようにsLepRがある場合、レプチンはsLepRによって捕捉され、脳のレプチン受容体に結合できません。

注2. レプチン:
レプチンは、脂肪細胞から血中に分泌されるホルモンです。図のように、レプチンは脳のレプチン受容体に結合し、食欲を抑制させるとともに、カロリー消費を亢進させる働きがあります。上述のsLepRに捕捉されてレプチンの働きが止められると、この逆の状態となり、食欲は増え、カロリー消費は減ります。

詳細(プレスリリース本文)PDF

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
教授 片桐 秀樹
電話番号:022-717-7611
Eメール:katagiri*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科広報室
電話番号:022-717-7891
Eメール:press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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