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血球減少を伴う遺伝子疾患のマウス作製に成功 造血メカニズムの解明に期待

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科遺伝医療学分野 准教授 新堀哲也
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 遺伝子変異により血小板が減少する疾患を持つマウスの作製に世界で初めて成功しました。
  • RUSAT(注1)の原因となるMECOM(EVI1)(注2)変異が個体で造血幹細胞の減少を来すことを世界で初めて確認しました。
  • 作製したマウスは、血液を作る仕組みの解明に有用であり、ヒトでの治療法開発に繋がることが期待されます。

【概要】

「橈骨尺骨癒合を伴う血小板減少症」(RUSAT:ルサット)は、骨髄で血液細胞が十分に作られなくなり出血が止まりづらくなったり貧血を生じたりするほか、前腕の二本の骨が癒合することで手をひねる動きが制限される症状を特徴とする希少な遺伝子疾患です。RUSATの原因遺伝子であるMECOM(EVI1)(注2)は、白血病細胞での発現増加が広く知られるなど血液細胞の産生に重要な遺伝子です。

東北大学大学院医学系研究科遺伝医療学分野の永井康貴 (ながい こうき) 医員、新堀哲也 (にいほり てつや) 准教授、青木洋子 (あおき ようこ) 教授、同生物化学分野五十嵐和彦 (いがらし かずひこ) 教授らの研究グループは、RUSATの患者で実際に同定されたMECOM(EVI1)変異を導入したマウスの作製に成功しました。作製したマウスでは前腕の骨の癒合は認められませんでしたが、加齢とともに血小板減少がみられ、造血幹細胞が減少しており、RUSATの骨髄での症状を再現しました。これによりRUSATの原因となるMECOM(EVI1)変異が個体で造血幹細胞の減少を来すことが世界で初めて確認されました。作製したマウスは、血液を作る仕組みの解明に有用であり、ヒトでの治療法開発に繋がることが期待されます。

本研究成果は、2023年4月26日に国際科学誌Blood Advances(電子版)に掲載されました。

図1.正常型とMECOM(EVI1)変異を持つマウスでのa:血小板数とb:造血幹細胞数の比較。下線はP値。(本成果論文Blood Adv. 2023 Apr26;bloodadvances.2022008462. より改変)

【用語解説】

注1. 橈骨尺骨癒合(とうこつしゃっこつゆごう)を伴う血小板減少症:血液疾患に注目した場合のRadioulnar synostosis with amegakaryocytic thrombocytopenia (RUSAT、無巨核球性血小板減少症を伴う橈尺骨癒合症)の呼称。Congenital thrombocytopenia with radioulnar synostosisとも呼ばれるが、現在国際的な疾患データベースOMIMではRUSATとして登録されている。

注2. MECOM(EVI1): MECOMMDS1 and EVI1 complex locus遺伝子の略称。転写開始点の違いによりMDS1-EVI1MDS1EVI1が連続したもの)とEVI1を発現する。今回マウスに導入した遺伝子変異はEVI1に存在しており、いずれも影響を受ける。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科遺伝医療学分野
准教授 新堀 哲也(にいほり てつや)
TEL: 022-717-8139
E-mail: tniihori*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学研究科広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-7149
E-mail: press*pr.med.tohoku.jp(*を@に置き換えてください)

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