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レーザーでグラフェン単層膜のナノ加工に成功 グラフェンを利用するナノデバイスの開発を加速する要素技術の実現に期待

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 助教 上杉祐貴
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 世界で最も薄い素材である炭素原子1層分のグラフェン膜を、レーザーで微細加工することに成功しました。
  • レーザーの照射条件を調整することで、グラフェンの表面洗浄や、原子レベルの欠陥形成などにも応用の可能性があることを発見しました。

【概要】

優れた物理特性をもつことから「夢の素材」として知られるグラフェン(注1)ですが、従来のナノ技術(注2)では論文などで提案される種々のグラフェンデバイスを効率的に作製することは困難でした。これはグラフェンが極限的に薄いシート状の素材であり、また、表面の汚染や構造の変質に敏感で、デバイスの特性を損なわずに加工・製造するのが困難なためです。

東北大学多元物質科学研究所の上杉祐貴助教、小澤祐市准教授、佐藤俊一教授、大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻の門口尚広大学院生(研究当時)、同専攻の小林哲郎大学院生、金属材料研究所の長迫実助手らの研究グループは、フェムト秒レーザー(注3)を使って炭素原子1層分の厚さからなるグラフェン膜を、100ナノメートル(ナノ=10億分の1)以下の精度で加工することに成功しました。また、レーザー照射したグラフェン膜を高性能の電子顕微鏡(注4)で観察したところ、表面の汚染物が除去され、数ナノメートルの細孔や原子レベルの構造変化を生じさせることができることを発見しました。

これらの知見は、グラフェン素材のエンジニアリング手法の確立に役立つとともに、次世代半導体産業や量子科学産業の開拓を加速する研究成果であると考えられます。

本研究成果は、米国化学会発行の最先端のナノサイエンスを取り扱う学術誌Nano Lettersに2023年5月16日付けで掲載されました。

図 1. レーザー照射により穴あけ加工されるグラフェン膜のイメージ図。炭素原子の大きさを誇張して示しており、実際の大きさとは異なる。

【用語解説】

注1. グラフェン
蜂の巣状に炭素原子が結合した構造をもつシート状の物質で、原子1層分の厚さに単離したり成膜したりすることができる。高い電子移動度、機械的強度、熱伝導性、光透過性などの優れた物理特性を有する。

注2. ナノ技術
マイクロメートル(マイクロ=100万分の1)よりも小さな精度で素材を自在に制御する微細技術。特に、分子や原子のスケールで物質を制御する技術は、最先端の半導体産業や量子科学研究の要素技術である。ナノテクノロジーともいう。

注3. フェムト秒レーザー
光のパルスを繰り返し放出するレーザー装置。1パルスの典型的な持続時間は100フェムト秒(フェムト=1000兆分の1)程度。光を時間的に圧縮することで、小型の発電所1個分に相当するパワー(1~10万キロワット)を瞬間的に発生できる。

注4. 電子顕微鏡
電子の波としての性質を利用した顕微鏡装置。光学顕微鏡で分解できる最小の大きさが200ナノメートルなのに対し、高性能の電子顕微鏡では原子1個分の大きさよりも小さな0.1ナノメートル以下の分解性能をもつ。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
助教 上杉 祐貴(うえすぎ ゆうき)
TEL:022-217-5146
E-mail: uesugi*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
E-mail: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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