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ミトコンドリア病治療候補薬 MA-5によりモデル生物の神経・筋老化を抑制 ―活動性低下を改善し健康寿命延伸への寄与を目指す―

【本学研究者情報】

〇大学院生命科学研究科 教授 東谷篤志
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ミトコンドリア病治療候補薬MA-5(注1)により、モデル生物線虫の老化による活動性の低下が改善することを明らかにしました。
  • 線虫に少量のMA-5を投与し続けたところ、老化の過程で見られる体壁筋ミトコンドリア(注2)の断片化と消失、Ca2+の過剰蓄積、神経細胞にみられる老化損傷の発症などの進行をいずれも抑制することがわかりました。
  • フレイル(注3)の発症の予防と改善へのMA-5の有効性が期待されます。

【概要】

神経や骨格筋の老化は心身の働きを弱めフレイルの発症につながるため、高齢化社会における深刻な問題です。また老化においては、様々な組織・器官におけるミトコンドリアの働きやその量が低下することも知られています。

東北大学大学院生命科学研究科の東谷篤志教授らの研究グループは、同大学大学院医学系研究科の阿部高明教授と共同で、阿部教授らが開発したミトコンドリア病治療候補薬MA-5が老化に伴う活動性の低下を予防・改善に有効であるかどうかを、モデル生物Cエレガンス(線虫)を用いて調べました。

その結果、線虫の加齢に伴う運動性ならびに神経反射応答性の低下がMA-5投与によって抑えられることが確認できました。老化した線虫の細胞レベルで解析したところ、運動に不可欠な体壁筋細胞内のミトコンドリアの断片化と消失、それを惹起するミトコンドリアCa2+の過剰蓄積、頭部の感覚神経では樹状突起にみられる損傷の進行がいずれも少量のMA-5の投与を続けることで緩和されました。本成果により、MA-5の投与によるフレイル発症の予防・改善につながることが期待されます。

本成果は、加齢研究の専門誌npj Agingに2023年8月1日付けで掲載されました。

図1. MA-5による老化線虫にみられる運動性、神経反射の応答性低下の改善。

【用語解説】

注1. ミトコンドリア病治療候補薬MA-5 : 東北大学大学院医学系研究科および医工学研究科の阿部高明教授らが開発してきた新規化合物 Mitochonic acid-5 (ミトコニック アシッド5、MA-5)は、既存薬とは異なる全く新しいメカニズムのミトコンドリア病治療薬として期待されています。参考(2021年12月6日の東北大学プレスリリース

注2. 体壁筋ミトコンドリア : 線虫Cエレガンスの筋肉は大きく体壁筋と咽頭筋の2種類にわけられます。体壁筋は脊椎動物の骨格筋に、咽頭筋は心筋に類似し、前者は線虫の動きに、後者は摂食に関与します。今回は、線虫の老化に伴う活動性の低下を調べる目的で、体壁筋のミトコンドリア状態を観察しました。

注3. フレイル: 加齢に伴い活動性が低下し心身が老い衰えた状態を指します。健康な状態と要介護状態の中間的な状態で、健康で長寿を目指すためにはフレイル対策が求められています。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 東谷 篤志
TEL: 022-217-5715
E-mail: atsushi.higashitani.e7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか(たかはしさやか)
TEL: 022-217-6193
E-mail: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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