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超硫黄分子によるウイルスと慢性肺疾患の制御法を開発 ミラクル分子・超硫黄による病気のコントロールで未来型呼気医療を展開へ

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科環境医学分野 教授 赤池孝章
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 多彩な生理機能を持つミラクル分子である超硫黄注1が新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス感染症のみならず、肺気腫・COPDや特発性肺線維症などの難治性肺疾患注2の制御因子・予防治療薬となる可能性があることを明らかにしました。
  • 株式会社島津製作所との共同研究により、自然に吐く息(呼気)をサンプル(試料)とする「呼気オミックス」注3による新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス感染症の診断法の開発に成功しました。
  • 今後、超硫黄分子と呼気オミックスを用いた、個別化医療、遠隔・在宅健康診断、各種疾病の診断・治療・未病予防などに応用し革新的な未来型医療を展開します。

【概要】

新型コロナウイルスやインフルエンザ感染症および慢性難治性肺疾患(COPDや肺線維症)などの病態解明、高精度な診断、病期・病状の評価、重症化のリスク判定、予後・合併症の予測と診断、予防・治療薬の開発は喫緊の課題です。

東北大学大学院医学系研究科環境医学分野の赤池孝章教授らの研究グループは、マウスを用いて超硫黄分子が新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス感染症に対して強力な感染防御能を有し、難治性炎症性肺疾患であるCOPD・肺気腫・特発性肺線維症などの予防・治療効果を明らかにしました(図1)。

また、株式会社島津製作所との共同研究により、自然に吐く息(呼気)を用いた無侵襲呼気オミックス解析法を開発し、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス感染症の高精度な診断法を確立しました。今後、呼気オミックスを、心血管・肺疾患、生活習慣病、動脈硬化、糖尿病などの代謝性疾患やがんなどの診断、健康管理、未病予防の遠隔医療などに展開し、未来型呼気医療の確立を目指します(図2)。

本研究成果は2023年7月25日付けで国際学術誌Nature Communicationsに掲載されました。

図1. 超硫黄分子による様々な肺疾患に対する保護効果
ウイルス感染症、慢性閉塞性肺疾患(COPD; 肺気腫)、特発性肺線維症(IPF)では、炎症性サイトカインによる慢性炎症と酸化ストレスがもたらされる。超硫黄分子は、抗ウイルス効果を発揮するだけでなく、炎症反応と酸化ストレスを強力に抑制し病態を制御することで、気道と肺に保護的役割を果たす。

【用語解説】

注1. 超硫黄(supersulfides): ポリスルフィド構造を分子内に有する硫黄代謝物の総称。カテネーション・ポリスルフィド構造により、求核性と親電子性を併せ持ち、多彩な生物活性を示す。

注2. 難治性肺疾患: 肺気腫・慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease, COPD)や、病因や治療法が未だに確立されていない特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis, IPF)などの肺疾患。

注3. 呼気オミックス: 従来の鼻や口(咽頭)からの試料採取・検査システムに替わる、自然に吐く息(呼気)を用いた無侵襲的な検査システムである。呼気オミックスは、呼気の中に存在するウイルスや、生体由来のタンパク質、代謝物を解析する最先端技術である。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科環境医学分野
教授 赤池 孝章(あかいけ たかあき)
TEL: 022-717-8164
E-mail: takaike*med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科 広報室
TEL: 022-717-8032
E-mail: press*pr.med.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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