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フォトニック結晶で一般相対性理論に基づく疑似重力効果を実現 ~次世代6G通信の電磁波制御用基盤技術として期待~

【本学研究者情報】

大学院工学研究科電子工学専攻
教授 北村 恭子
研究者ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 誘電体である周期構造を持つフォトニック結晶(注1の誘電率(格子点)配列を緩やかに(ひず)ませた「歪(ひずみ)フォトニック結晶」を用いてテラヘルツ電磁波(注2,3の伝搬方向を曲げることに成功しました。
  • 歪フォトニック結晶の効果は一般相対性理論における重力場が生み出す「歪んだ空間」に対応し、電磁波の伝搬方向の曲げはフォトニック結晶での電磁波に対する疑似重力効果を実現できることを示しています。
  • フォトニック結晶をプラットホームとした基礎物理科学の発展に加え、次世代の移動通信システム「6G」とその未来に向けて利活用が期待されるテラヘルツ電磁波を制御するための基盤技術として期待できます。

【概要】

 電磁波の伝搬方向は、屈折率の空間分布で決定されます。一方、アインシュタインの一般相対性理論によれば、時空間の歪によって生じる重力場も電磁波の伝搬方向に影響を及ぼします。

 東北大学大学院工学研究科の北村恭子教授(2023年8月まで京都工芸繊維大学に在籍)と大阪大学大学院基礎工学研究科の冨士田誠之准教授らの研究グループは、周期的な屈折率分布を有するフォトニック結晶の格子点の位置を空間的に連続的に緩やかに変化させ、電磁波に対する時空間の歪を人工的に生成させることで疑似的な重力の効果を発現できると考えました。そこで本研究では、300ギガヘルツ帯のテラヘルツ電磁波に作用する歪フォトニック結晶を作製し、電磁波の伝搬方向を曲げることに成功しました。この性質は、テラヘルツ電磁波を用いる次世代移動通信システム「6G」で電磁波の制御に活用できる可能性があります。

 本成果は、2023年9月28日に米国物理学会の専門誌Physical Review Aにてオンライン公開されました。

図1. 歪フォトニック結晶と通常のフォトニック結晶の模式図。a(0)は正方格子フォトニック結晶における格子点の周期(格子定数)であり、歪フォトニック結晶ではその基本周期a(0)から、わずかに変化させる。平均的な誘電率を一定にするため、格子定数の変化に応じて、孔の大きさrも変化させる。

【用語解説】

注1 フォトニック結晶:
固体結晶と類似の周期的な誘電率分布を有する構造であり、電磁波の波長程度の周期を有する。

注2 電磁波:
電界と磁界の変化が伝搬する波であり、波長、もしくは周波数の違いによって、電波、光(赤外線、可視光線、赤外線)、X線、ɤ線などと呼ばれる。周波数3テラヘルツ以下の電磁波が電波で、3テラヘルツ以上が光である。

注3 テラヘルツ電磁波:
およそ100ギガヘルツ(0.1テラヘルツ)から10,000ギガヘルツ(10テラヘルツ)の電波と光の中間領域の周波数を有する電磁波。電波の透過性と光の直進性をあわせもち、次世代の情報通信システムでの利活用が期待されている。300ギガヘルツ(0.3テラヘルツ)は波長1ミリメートルに相当する。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 電子工学専攻
教授 北村恭子(きたむらきょうこ)
TEL: 022-795-5670 
Email: kyoko.kitamura.c2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科
情報広報室 沼澤みどり(ぬまざわみどり)
TEL: 022-795-5898  
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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