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リチウム空気電池用カーボン正極の高容量とサイクル寿命の両立に成功 ~重さがリチウムイオン電池の数分の1になる次世代畜電池実用化に期待~

【本学研究者情報】

〇材料科学高等研究所/多元物質科学研究所 教授 西原洋知
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 次世代蓄電池として期待されているリチウム空気電池(注1のカーボン正極として、積層と劣化サイト(注2が無いグラフェン(注3構造をマルチスケールで階層的に制御した新材料を提案しました。
  • 多孔性と劣化サイトフリーの両立により、高容量とサイクル寿命を両立できます。
  • あらゆるカーボン正極はグラフェン構造で構成されますが、本成果ではグラフェン構造を3次元化する場合の1つの理想形を提示しました。

【概要】

単位質量当たりに蓄えられるエネルギー(質量エネルギー密度)が高いリチウム空気電池は、特に軽さが求められるドローンやIoT 機器、家庭用蓄電などへの応用が期待されている次世代の蓄電デバイスの1つです。理論的なエネルギー密度は現在のリチウムイオン電池の数倍以上に達しますが、電池内部で正極、負極、電解液の全てが激しく劣化するため、十数回程度しか可逆的に充放電できないことが大きな課題となっています。

東北大学材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)の西原 洋知 教授(多元物質科学研究所 兼務)、余 唯 助教らの研究グループは、正極に使用されているカーボン材料の高容量とサイクル寿命の両立に取り組みました。これまでも活性炭、カーボンナノチューブなど多種多様なカーボン正極が検討されてきましたが、どれも満足な結果が得られていませんでした。研究グループはあらゆるカーボン材料を構成する基本構造であるグラフェンに着目し、その化学的特徴に基づき、カーボン新素材「グラフェンメソスポンジ」(注4を用いて理想の正極構造を提案しました。その結果、従来に無い超高容量とサイクル寿命の両立に成功しました。

本研究成果は2023年11月10日(現地時間)、科学誌Advanced Energy Materialsに掲載されました。

なお、本成果は国立研究開発法人物質・材料研究機構 (NIMS) の松田 翔一 チームリーダー、大阪大学基礎工学研究科附属太陽エネルギー化学研究センターの中西 周次 教授、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科の近藤 敏啓 教授、北海道大学大学院工学研究院 向井 紳 教授らとの共同研究によるものです。

1. グラフェンメソスポンジ自立膜の調製スキームと構造の模式図

【用語解説】

注1. リチウム空気電池
次世代電池として期待されている蓄電デバイスの1つ。正極と負極ではそれぞれ、過酸化リチウム(Li2O2)、金属リチウムの可逆的な析出と分解が生じる。理論的なエネルギー密度は現在のリチウムイオン電池の数倍以上に達するが、十数回程度しか可逆的に充放電できないことが大きな課題。

注2. 劣化サイト(エッジ)
グラフェンの端のこと。水素原子や酸素官能基で終端されている。エッジはカーボン電極の劣化の起点となるため、これを排除すると電池を安定化させることができる。詳しくは文献(DOI: 10.1039/c8ee03184c)参照。

注3. グラフェン
sp2炭素から成る炭素同素体で、炭素原子1個分の厚さをもつ1枚のシート状物質。炭素原子同士は共有結合で連結し、六角網面を形成している。本来の「グラフェン」は1枚のシート状物質を指す用語であるが、最近は数枚積層した材料もグラフェンと呼ばれることが多く、混乱が生じている。本研究で提案する材料は、殆ど積層が無いグラフェンから構成されている。

注4. グラフェンメソスポンジ
積層の無いグラフェンから成るメソ多孔性カーボン。比表面積や細孔容積が非常に大きく、導電性が高く、耐食性が高く、機械的柔軟性を有するカーボン新素材。詳しくは文献(DOI: 10.1002/adfm.201602459)参照。

詳細(プレスリリース本文)※2023年11月16日に訂正版へ差替えPDF

※以下のとおり訂正いたしました。
原稿内「重量」を「質量」に修正

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
教授 西原洋知
TEL: 022-217-5627
Email: hirotomo.nishihara.b1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 材料科学高等研究所 (WPI-AIMR)
広報戦略室
TEL: 022-217-6146
Email: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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