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培養細胞上の病原細菌の動きを機械学習で解析 未曽有の感染症対応への貢献に期待

【本学研究者情報】

大学院工学研究科応用物理学専攻
准教授 中村 修一
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 病原微生物を感染させた動物細胞の経過観察は病気の仕組みを解明するために重要ですが、観察で用いられる蛍光マーカーが微生物の生理機能に影響するという課題があります。
  • 監視カメラの映像解析等に用いられる機械学習(注1)による「背景減算法」を応用し、動物細胞に付着した病原性細菌レプトスピラの運動を、蛍光マーカーを使わずそのまま解析することに成功しました。
  • 微生物種によらず、背景ノイズに強い本技術は、新興感染症への迅速な対応や新しい診断支援技術の開発に役立つことが期待されます。

【概要】

 病原微生物を動物細胞に感染させて経過を調べる実験は、病気の仕組みの解明に役立ち、動物実験よりも行いやすいため、様々な感染症を対象に行われています。微生物に蛍光マーカーを付けて動物細胞と区別する手法(蛍光標識)が一般的ですが、蛍光物質の細胞の生理機能阻害の可能性があり、使える微生物種は限られています。

 東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の阿部圭吾氏(研究当時 博士後期課程学生)と中村修一准教授は、国立感染症研究所の小泉信夫主任研究官と共同で、腎臓細胞に付着した細菌の動きを、蛍光標識を使うことなく、機械学習によって自動追跡する手法を開発しました。本技術は監視カメラの映像解析で利用されている「背景減算法」を応用したもので、顕微鏡で撮影した映像から腎臓細胞(背景)の信号を差し引くことで、動く細菌を明瞭に観察できます。解析対象の微生物種を選ばない本技術は、新興感染症への迅速な対応や新しい診断支援技術の開発につながります。本研究成果は、2023年12月5日19時(日本時間)に英国科学誌Nature Communications にオンライン掲載されました。

図1. 機械学習を用いた病原性細菌の運動トラッキング法。(a) 腎臓細胞への細菌感染実験の模式図。液体を入れられる容器がついたスライドガラス上に構築した培養腎臓細胞シートにレプトスピラ属細菌を感染させ、細菌の様子をビデオ顕微鏡で記録した。(b)運動トラッキングの流れ。(c)機械学習を用いた背景減算法。ピクセルごとの明るさの分布から背景とみなされた分布を差し引くことで、前景(この場合は細菌)が浮かび上がるように観察できるようになる。

動画資料:https://youtu.be/HnGkaJcm_AU

【用語解説】

注1 機械学習:
コンピュータに大量のデータを反復学習させることでデータセットのパターンなどを分析させ、その分析結果をもとに未知のデータの分類などを行う技術。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院 工学研究科 応用物理学専攻
准教授 中村 修一
TEL: 022-795-5849
Email: shuichi.nakamura.e8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科
情報広報室 
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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