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デバイス化が容易なハーフメタルの熱電性能を4倍向上 点欠陥制御と部分置換で半導体に匹敵する熱電材料に期待

【本学研究者情報】

大学院工学研究科 応用物理学専攻
准教授 林 慶
研究者ウェブサイト

【発表のポイント】

  • p型ハーフメタル(注1のMn2VAl中の構成元素間に生じるアンチサイト欠陥(注2の量を、固体粉末生成と結晶合成条件に着目して精密制御する方法を確立しました。
  • アンチサイト欠陥量の制御に加えて、構成元素とは異なるSiでAlを部分置換することで、Mn2VAlの熱電性能を約4倍向上させることに成功しました。
  • 先行研究のCo2MnSi(n型)に本成果のMn2VAl(p型)を組み合わせることで、エネルギーハーベスティング(注3技術の進展が期待できます。

【概要】

 熱電材料は、排熱を電気に直接変換できる、環境にやさしいクリーンなエネルギーハーベスティング材料として注目されています。これまで、熱電材料として高性能の半導体が開発されてきましたが、デバイス化の際に金属電極との接合を工夫する必要があります(図1)。熱電材料として金属を用いれば、金属電極との接合が容易になると考えられます。

 東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻の林 慶准教授と宮﨑 讓教授はこれまで、金属のような電気的性質を示すハーフメタルに注目し、n型で半導体に匹敵する熱電性能を得ていました。しかしn型と組み合わせて使うp型の熱電性能がn型に比べて極めて低いことが課題として残っていました。

 林准教授らの研究グループは、中国・清華大学の李 和章博士(東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻 博士後期課程修了)、李 敬鋒教授と共同研究を行い、ハーフメタルであるマンガン・バナジウム・アルミニウム合金(Mn2VAl)において、アンチサイト欠陥の精密制御と部分置換の手法を組み合わせて、p型の熱電性能を約4倍向上させることに成功しました。これにより、金属熱電材料を用いたエネルギーハーベスティングの実現が期待されます。 本成果は、12月12日材料科学の専門誌Journal of Materiomicsに掲載されました。

 

図1. 熱電材料を使ったデバイスの模式図

【用語解説】

注1. ハーフメタル:
電子のスピンにより異なる電子状態をもち、片方のスピンの側では価電子帯が電子で完全に満たされ、伝導帯に電子が存在しない半導体的な電子状態であるのに対し、もう片方のスピンの側では価電子帯が完全に満たされない金属的な電子状態になっている物質を指す。

注2. アンチサイト欠陥:
作製した試料に含まれる点欠陥の一種。構成元素の内、2種類の元素が互いの原子位置を占有し、原子同士が相互置換した状態になっている欠陥のことをアンチサイト欠陥という。本研究ではVとAlの間のアンチサイト欠陥を導入した。

注3. エネルギーハーベスティング:
身の周りの未利用エネルギーから電力を得る発電技術のこと。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻
准教授 林 慶
TEL: 022-795-4637
Email: kei.hayashi.b5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院工学研究科 応用物理学専攻
教授 宮﨑 讓
TEL: 022-795-7970
Email: yuzuru.miyazaki.b7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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