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低エネルギーでガラス表面に圧縮応力を付与できる新しい組成設計技術を開発 - 車載ガラスなど大型のガラスの生産エネルギー削減に貢献 -

【本学研究者情報】

大学院工学研究科 応用物理学専攻
教授 小野円佳
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ガラスのネットワークの配置エントロピー(注1)を利用することで、ガラスの膨張率がガラス転移温度以上においてのみ増大する組成設計技術を発見しました。
  • 新たなガラス組成制御技術の発見により、ガラスに適用される強化手法の効率が倍以上に向上しました。
  • 本技術の適用により、建築や車載用の大型ガラスの生産コストやエネルギー消費を大幅に削減できる見込みがあります。

【概要】

建物の窓や携帯情報端末のディスプレイ、自動車のウィンドウガラスなど、ガラスは私たちの生活に欠かせないものであり、用途に応じた強度が求められます。ガラスはもともと壊れやすい素材ですが、日常的に使用できるのは、強化技術が進化し、ガラス表面に強い圧縮応力(注2)を与えることで表面の傷の広がりを防止できるためです。代表的な手法として、化学強化(注3)と物理強化(熱強化)(注4)が挙げられますが、高環境負荷、大きなエネルギーが必要であることなどの課題がありました。

東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の小野円佳教授は、AGC株式会社の安間 伸一博士、宮嶋 達也氏、依田 和成氏、加藤 保真博士、伊藤 節郎博士と共同で、ガラスの組成を工夫することで、従来の物理強化手法を使っても倍以上の圧縮応力を与えられるガラス群を発見しました。これにより、ガラスの強化に必要なエネルギーを大幅に削減できるようになりました。

本研究成果は材料分野の専門誌Materials & Design に2024年1月19日にオンライン掲載されました。

1. Na2OB2O3SiO2の三組成からなるガラスにおいて、低温(ガラス転移温度以下の50-350℃)の熱膨張率を基準とし、高温(ガラス転移温度以上の650℃付近)の熱膨張率の比を調べた図。
Na2O:B2O3=1:1組成(SiO20.5-0.7)で膨張率の比率が高くなることが分かる。(図中の赤色部分)

【用語解説】

注1. 配置エントロピー:
系がもつエントロピー(乱雑さ)のうち、構成原子や分子を詰め込み得る場合の数によって決まる量。その数が多いほど大きな値となる。

注2. 圧縮応力:
ガラスを曲げると、曲げた内側の面には圧縮応力(縮めようとする力)が生じ、外側の面には引張応力(引っ張る力)が生じる。ガラスは一般的に、圧縮応力に強く、引張応力に弱いという性質を持つため、圧縮応力を高めることにより高強度化できるとされている。

注3. 化学強化:
モバイルフォンなどの小型ガラスによく用いられる手法で、圧縮応力を高めることができ、傷の伸展防止効果が高いが、ガラスを高温の硝酸塩融液に10時間以上浸漬する必要があり環境への負荷が大きい。

注4. 物理強化(熱強化):
建築材料や車載向けの大型ガラスに用いられる手法で、ガラスを高温にしたのちに急速に冷却することによりガラス表面に圧縮応力を与える方法。熱強化ともいう。化学物質への浸漬の必要がなく環境にやさしいものの、圧縮応力を高める効果はやや弱いこと、冷却のために大きなエネルギーが必要となることが課題である。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻
教授 小野円佳
TEL: 022-795-7952
Email: madoka.ono.d7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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