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火炎と爆轟(ばくごう)を理論的につなぐことに成功 安定した超音速燃焼器の実用化に期待

【本学研究者情報】

〇流体科学研究所 助教 森井雄飛
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 着火と火炎が同じ構造を持つことを明らかにした理論から、燃焼理論を拡張し、「自着火反応波」を定義しました。
  • 「自着火反応波」により、亜音速のデフラグレーション(火炎)(注1から超音速のデトネーション(爆轟:ばくごう)(注2に至る反応波の伝播を理論的に統一しました。
  • 実機サイズの超音速燃焼でも火炎が定常にできることが示され、実用化に向けて大きく前進。

【概要】

近年、二酸化炭素の排出量を削減することを目的に、自動車エンジンなど燃焼器のさらなる高効率化が求められています。燃焼器の高効率化は古くから進められていますが、さらなる高効率化には従来避けられていた消炎条件近傍や爆発する条件近傍などの極限的な条件を採用するか、新たな燃焼形態を探索することが必要です。

燃焼は化学反応が可燃性気体の中を伝播する現象であり、その反応によって生じた波は音速未満の亜音速領域で火炎、超音速領域で爆轟として自己伝播することがわかっています。しかし、伝播速度が音速に近くなるとどのような条件で火炎から爆轟に遷移するかは解明されていませんでした。

東北大学流体科学研究所の森井雄飛助教らの研究グループは、同研究グループが独自に導いた着火と火炎の等価性に関する理論を適用することで、反応波を「自着火反応波」として拡張し、火炎と爆轟を理論的につなぐことに成功しました。これにより、自動車エンジンの高効率化の阻害要因であるノッキングの発生条件や、安全工学として重要な爆轟遷移条件を明確にできるようにしました。

革新的な燃焼器の実現に向けて爆轟の適用が期待されていますが、爆轟の持つ非定常性が実機開発を困難にしています。しかし予混合気(注3を爆轟速度よりも高速に流入させることで、「自着火反応波」が理論的に安定して存在する可能性が分かりました。数値計算を実施し、衝撃波構造を持たない安定した「自着火反応波」が形成されることを確認しました。この結果、実機サイズの超音速燃焼でも火炎が定常にできることが示され、衝撃波が発生しない燃焼器の実用化に向けて大きく前進しました。

本研究は2024年1月18日、体分野の専門誌Physics of Fluids誌に掲載され、その高い汎用性から、Editor's picks(編集者推薦論文)に選出されました。

図1. メタン・空気予混合気に対して、圧力101325.0 Pa、入口温度を500から1200 Kまで変化させた場合の「自着火反応波」が温度に依存した直線で示されます。従来から知られている燃焼形態だけではなく、それぞれの条件における安定性についても、この図から議論できます。図中の丸印は流入速度と燃焼波の速度が同じ条件を、星印は流入速度が爆轟速度と同じ条件を、菱印は「自着火反応波」内で速度が音速を超えて衝撃波が生成する条件を示しています。

【用語解説】

注1. デフラグレーション(火炎):衝撃波を伴わない燃焼。伝播速度は数十センチメートルから数メートル程度であり、圧力上昇は無視できるほど小さい。

注2. デトネーション(爆轟:ばくごう):衝撃波の圧縮により高温になった可燃性気体が化学反応を起こし、そのエネルギーが燃焼前方の衝撃波を支えることで超音速で伝播する燃焼波。伝播速度が毎秒数キロメートルと非常に高速であり、背後の圧力は非常に高い。

注3. 予混合気:燃焼させる可燃性気体と酸化剤をあらかじめ混合した気体。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 流体科学研究所
助教 森井雄飛
TEL: 022-217-5296
Email:morii*edyn.ifs.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学流体科学研究所
広報戦略室
TEL: 022-217-5873
Email: ifs-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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