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らせん磁性体のねじり方向を利用する室温駆動の新型メモリの動作を実証 超高集積かつ高堅牢な次世代記憶素子の実現へ期待

【本学研究者情報】

金属材料研究所
助教 増田英俊

研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 磁気モーメント(注1がらせんを描くように整列する物質をらせん磁性体(注2と呼び、らせんの右巻き・左巻きの自由度「キラリティー」を持ちます。室温でキラリティーメモリの書き込み・読み出し操作が可能ならせん磁性体であるマンガン金化合物(MnAu2)の薄膜を新たに開発しました。
  • キラリティーメモリを用いることで、超高集積、高堅牢性をもつ「らせん磁性スピントロニクス」が実現する可能性を提案しました。

【概要】

 スピントロニクス(注3)は磁石の向き(強磁性体の磁化方向)の上下を情報記憶に利用することで発展してきましたが、周囲に発生する磁場の影響で磁石同士の相互作用がビット間の干渉を起こすなどの問題によりその超高集積化には限界があることが指摘されてきました。

 東北大学金属材料研究所の増田英俊助教、関剛斎教授、小野瀬佳文教授、東邦大学の大江純一郎教授らの共同研究グループは、これまでの課題解決につながる磁気モーメントがらせん状に整列したらせん磁性体のねじれの方向「キラリティー」を室温で制御・検出可能なMnAu2薄膜を開発しました。

 らせん磁性体のキラリティーを用いて磁気メモリを作製すれば、各磁気モーメントが周囲に発生する磁場が打ち消しあうため、ビット間干渉などの問題がなく超高集積性と高い堅牢性を併せ持つ次世代の記憶素子となり、情報記憶デバイスの小型化、高耐久化につながることが期待されます。

 本研究の詳細は2024年3月7日10:00(英国時間)に科学誌Nature Communicationsに掲載されました。

図1. (上段)強磁性体における磁化の自由度。磁化方向(磁石の向き)は磁場によって制御される。強磁性体を用いた記憶素子では、+磁化状態(磁石が上向き)を"0"、−磁化状態(磁石が下向き)を"1"に割り当てることで、1ビットの情報を記憶する。
(下段)らせん磁性体におけるキラリティー自由度。矢印で表される磁気モーメントがらせんを描いて整列している。らせんの右巻き・左巻きに対応するキラリティーは電流と磁場によって制御される。キラリティーメモリでは右巻きと左巻きを"0"と"1"に割り当てる。

【用語解説】

注1. 磁気モーメント:
物質の中の原子ひとつひとつが持つ、微小な磁石(原子磁石)としての性質。物質全体で磁気モーメント(原子磁石)が揃っているような物質を、強磁性体(いわゆる磁石)と呼ぶ。

注2. らせん磁性体:
原子が作る1つの層(原子面)内で一方向に揃った磁気モーメントが、原子面が変わるごとに少しずつ向きを変えてらせん状に回転しているような、らせん磁気配列をもつ物質。希土類金属のテルビウム(Tb)やマンガン・シリコン合金(MnSi)などがよく知られているが、これらの物質では低温でのみらせん磁気状態が安定になる。

注3. スピントロニクス:
物質がもつ磁気的な性質をエレクトロニクスに利用する試み。代表的な例であるハードディスクドライブや磁気抵抗メモリは、強磁性体の磁化方向を情報記憶に用いている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所
助教 増田英俊
TEL: 022-215-2244
Email: hidetoshi.masuda.c8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所
情報企画室広報班
TEL: 022-215-2144
FAX: 022-215-2482
Email: press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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