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環境にやさしい工場のプロセスの迅速な構築につながる 機械学習技術を開発 ─ 複雑な化学反応の計算に必要な数百~数千の化学種を 5種類に減らしても同等の精度 ─

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 化学工学専攻
助教 松川 嘉也
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • ニューラルネットワーク(注1に詳細化学反応機構(注2という複雑なモデルを学習させるための新しい手法を開発しました。
  • ニューラルネットワークの予測精度を高精度化できる、従来法より偏りの少ないデータセット(注3の作成手法を提案しました。
  • 従来法では数百~数千の化学種(注4とその化学反応式を考える必要があり、非現実的な計算時間を要しました。本手法では主要成分のみに着目し、事例とした水性ガスシフト反応ではわずか5化学種で済むため、計算速度を大幅に高速化できました。

【概要】

低炭素・循環型社会の実現は急務であり、環境にやさしい化学プロセスを迅速に実現する必要があります。プロセス開発を従来よりも短時間で行うためには、シミュレーションの効果的な活用が欠かせません。シミュレーションの際に利用する化学反応モデルの精度が低いと、誤った結果を導く可能性があります。一方で、高精度な化学反応モデルを使用すると、シミュレーションに時間がかかるという課題がありました。

東北大学大学院工学研究科の松川嘉也助教らの研究グループは、詳細化学反応機構という精度が高く複雑なモデルをニューラルネットワークに学習させるための新たなデータセットの作成方法を開発しました。この方法は、化学反応の普遍的な特性を考慮して、化学反応の観点で偏りの小さなデータセットを作成することができます。そのデータセットを学習したニューラルネットワークは詳細化学反応機構に近い精度でごく短時間に反応速度を求めることができます。

本研究成果は、2024年5月11日に化学工学分野の専門誌 Chemical Engineering Journalにオンライン掲載されました。

図1. 本研究の概要: ニューラルネットワークを活用したモデルの簡略化手法

【用語解説】

注1. ニューラルネットワーク
人間の脳内にある神経細胞(ニューロン)のネットワーク構造を模した数学モデルであり、機械学習のモデルとしてよく利用される。

注2. 詳細化学反応機構
化学反応において、物質がどのような過程を経て最終生成物に変化していくかを示したものを反応機構といい、一続きの化学反応の各段階で起こることを詳細に記述しようと試みる理論的な推論である。特に、ラジカルなどのごくわずかにしか存在しない化学種も含めてできる限り多くの化学種を考慮した反応モデルを詳細化学反応機構と呼ぶ。様々な条件で精度よく利用することができるが、考える化学種数と化学反応式の数が多いため、シミュレーションに膨大な時間がかかる。

注3. データセット
何らかの目的や対象について収集され、一定の形式に整えられたデータの集合。機械学習などコンピュータによる自動処理を行うために用意された大量の標本データのことを指すことが多い。

注4. 化学種
分子、化合物、イオンや原子などを一括した言葉。詳細化学反応機構では酸素(O2)、水蒸気(H2O)、二酸化炭素(CO2)や水素ラジカル(H)など数百種類が考えられている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学 大学院工学研究科
助教 松川嘉也
TEL: 022-795-7251
E-mail: matsukawa@tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学 大学院工学研究科 情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
E-mail: eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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