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従来困難であった5nm以下の金属酸化物微粒子を精密に合成できる技術を開発 ~放射光分析で構造歪が誘起する特異な電子状態を発見~

【本学研究者情報】

〇国際放射光イノベーション・スマート研究センター/材料科学高等研究所 准教授 横哲
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 流通式超臨界水熱合成法(注1により反応時間を変化させるだけで1~10 nm(1nm=10億分の1m)の金属酸化物ナノ粒子を精密に合成する手法を開発しました。
  • 放射光X線回折(注2データを精密に解析し、超微細な酸化セリウム(CeO2)ナノ粒子が粒子の融合により高速成長することを明らかにしました。
  • 放射光軟X線分光(注3を駆使することで2 nm程度のCeO2は酸素欠損をともなわず構造歪が誘起する特異な電子状態をとることを初めて発見しました。

【概要】

金属酸化物は光学材料や磁性材料として幅広く使用されています。金属と比較してナノ粒子合成が難しく、特に5 nm以下の超微細粒子の合成は困難でした。またナノサイズで金属とは異なる性質を示すと想定されていましたが、検証はできていませんでした。

東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの横哲准教授と西堀麻衣子教授、東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の阿尻雅文教授、筑波大学数理物質系/エネルギー物質科学研究センターの西堀英治教授らの共同研究グループは、流通式超臨界水熱合成法における反応制御・高度化を研究し、反応時間を変える簡便な操作により1~10 nmの金属酸化物ナノ粒子を精密に合成する手法を開発しました。さらに放射光X線回折データを精密に解析し、超微細CeO2ナノ粒子は粒子の融合によって高速成長することを明らかにしました。また放射光軟X線分光を駆使し、2 nm程度のCeO2は酸素欠損をともなわず構造歪が誘起する特異な電子状態をとることを初めて発見しました。

本成果は、超微小なCeO2は酸化還元能を超える新たな機能を有し得ることを示しており、今後、超微細金属酸化物粒子を用いた新たな機能性材料の開発が進むことが期待されます。

本研究は2024年5 月29 日(米国時間)に米国化学会発行の学術誌Journal of the American Chemical Societyに掲載されました。

図1. 合成されたナノ粒子の粒径変化と電子顕微鏡像
(a) (赤):合成温度340 °C、(黒):合成温度300 °C、(b~f) 合成温度340 °C、 反応時間 (b) 0.04, (c) 0.2, (d) 1, (e) 3, (f) 95, and (g) 380 秒

【用語解説】

注1. 流通式超臨界水熱合成法:東北大学発のナノ粒子合成技術(阿尻雅文教授が1992年に提案)。超臨界水を反応場とした、金属酸化物ナノ粒子の大量合成法。

注2. 放射光X線回折:放射光は電子などの荷電粒子を光速近くまで加速し、その軌道が曲げられた時に放射される人工の光(電磁波)。その中に極めて高エネルギーのX線が含まれる。X線は波長が1 pm(1兆分の1メートル)~10 nm程度の光で、光子(光の粒)1個のエネルギーがおおむね5 keV以上を硬X線、2~5 keVをテンダーX線、0.1~2 keVを軟X線と呼ぶ。放射光X線回折は結晶性材料の構造・原子配列を解明する手法。

注3. 放射光軟X線分光:材料の化学状態・電子状態を明らかにする手法。軟X線は、酸素などの軽元素の解析に適している。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター
(兼)材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
准教授 横 哲
TEL:022-217-6323
Email: akira.yoko.c7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)
広報戦略室
TEL: 022-217-6146
Email: aimr-outreach*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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