2024年 | プレスリリース・研究成果
ウクライナ戦争とロシア少数民族 プーチン政権による動員令後、国外脱出したロシア少数民族に対するモンゴル国での支援および庇護希望者についての報告
【本学研究者情報】
〇東北アジア研究センター 教授 高倉浩樹
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 2022年9月以降のプーチン政権による動員令以降、徴兵を避けるためのロシアからの脱出者が相次いでいます。そのなかで、ロシア少数民族のモンゴルへの大量脱出は、東北アジア地域の民族間関係やアイデンティティに大きな影響をおよぼすと考えられる現象です。
- 本報告ではモンゴルと言語・文化・歴史を共有してきた少数民族ブリヤート人に着目しました。ロシア国からモンゴルへ出国したブリヤート人は、モンゴル国において三つの異なる立場から歓待と支援を受けることができたことを明らかにしました。
- その一方で、モンゴル社会ではブリヤート人とモンゴルとの歴史的・言語的つながりに対する様々な共感が発生しましたが、多くのブリヤート人にモンゴルでの永住を決意させていないことがわかりました。モンゴルの支援者とロシア少数民族の庇護希望者の関係は多面的かつ複雑です。
【概要】
東北大学東北アジア研究センターの高倉浩樹教授、日本学術振興会・堀内香里特別研究員、オーストラリア・クイーンズランド大学Byambajav Dalaibuyan研究員からなる国際共同チームは、ウクライナ戦争によるロシア少数民族の影響とモンゴル国での受入状況を解明しました。
2022年9月以降のプーチン政権による動員令以降、少数民族ブリヤート人はモンゴル国において歓待と支援を受けることができた一方で、言語をはじめ文化や社会の違いに直面し、モンゴル国への永住を決意してはいないことがわかりました。モンゴル国における支援者とロシア少数民族の庇護希望者の関係は多面的かつ複雑であり、さらなる調査研究が必要と考えられます。
この報告はドイツのKulturstiftung Sibirie社の学術図書『A Fractured North - Facing Dilemmas』(edited by Erich Kasten, Igor Krupnik, Gail Fondahl)の所収論文として刊行され、ノルウェー国ブドー市で開催された第11回国際北極社会科学会議(ICASS)において2024年6月3日に出版報告が行われました。

本論文が所収された学術図書の書影
【用語解説】
ブリヤート人:ロシアのバイカル湖周辺を中心に、モンゴルや中国などにも暮らす民族。彼らは、遊牧と仏教信仰の点でモンゴル人と文化を共有し、ブリヤート語とモンゴル語とは互いに理解し合えるほど近接しています。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学東北アジア研究センター
教授 高倉浩樹
TEL: 022-795-7572
Email: hiroki.takakura.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学東北アジア研究センター
事務室 小山田浩明
TEL: 022-795-6009
Email: asiajimu*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
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