2024年 | プレスリリース・研究成果
噛む力を利用して骨の強化を促す チタンインプラント表面の微細加工技術を開発 ―物理的に生物機能を制御する新たなインプラント材料の開発へ期待―
【本学研究者情報】
〇大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野 山田将博 准教授
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 噛む力で、チタン製の人工歯根を支える骨を強化し続けることができれば、インプラント治療の成功率は長期的に高まります。
- 無数のナノ突起をもつチタンインプラント表面を形成できる微細加工法を開発しました。
- 本加工法を利用したインプラントは、骨代謝の活性を司る骨細胞*1に物理的刺激を加えることで、三次元的な細胞間ネットワーク形成を促し、骨細胞の骨形成反応を高め続けることがわかりました。
【概要】
歯科用インプラントにおいては、噛む力を利用してインプラント周囲の骨を強くし続けることができれば、治療効果は長期的に安定すると考えられています。しかしこれまで、そのようなインプラントを形成する微細加工技術はありませんでした。
東北大学大学院歯学研究科分子・再生歯科補綴学分野の山田将博准教授および江草宏教授らの研究グループは、歯根表面に存在する歯周組織の一部がもつ物理的性質を模倣し、無数のナノ突起を形成する生体模倣チタン微細加工法を開発しました。
その生体模倣チタン表面に存在する無数のナノ突起が、付着した骨細胞を物理的に刺激し、三次元的な細胞間ネットワーク形成を促すとともに、噛む力との相乗効果により、細胞間ネットワークの発達と骨形成反応の活性化へと、骨細胞を自律的に制御し続ける可能性を示しました。
本研究成果により、生理的荷重に反応して骨を強くする新たなチタンインプラント材料の開発が期待できます。
本研究成果は、2024年7月2日に科学誌Biomaterials Advancesのオンライン版に掲載されました。
【用語解説】
注1.骨細胞:骨をつくる骨芽細胞が骨形成後に骨中に埋め込まれた状態で存在する細胞である。骨を構成する細胞の大部分を占め、神経細胞のような長い細胞突起を形成することにより、骨内で他の骨細胞と連結し、網目状の三次元ネットワークを形成する。骨細胞や骨を取り除く破骨細胞へ情報伝達し、それら細胞の機能を制御することで、骨代謝を調整する役割を担う。
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
分子・再生歯科補綴学分野
准教授 山田 将博(やまだ まさひろ)
Email: masahiro.yamada.a2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院歯学研究科
分子・再生歯科補綴学分野
教授 江草 宏(えぐさ ひろし)
Email: egu*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科広報室
電話: 022-717-8260
Email: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています