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海の表層へ栄養塩をもたらす「トワイライトゾーン」 〜海洋生態系の予測精度を向上しうる新知見~

【本学研究者情報】

〇東北大学・海洋研究開発機構 
変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC) 
教授 Keith Rodgers 
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【発表のポイント】

  • 海洋の表層にもたらされる栄養塩の量は、植物プランクトンの増殖や食物網を通じて、魚類の生息域などにも影響することが知られています。
  • 広大な低緯度海域(赤道をはさむ南緯30度から北緯30度までの海域)において、光がほとんど届かない海洋下層での栄養塩の再生と、再生された栄養塩の表層への供給が海洋生態系にとって重要なことを、海洋観測データと数値シミュレーションによって初めて示しました。
  • 本研究成果を気候の将来予測モデルに適切に反映させることで、気候変動が海洋生態系に及ぼす影響の予測精度を向上させ、海洋生態系サービスの持続可能な利用に貢献することが期待されます。

【概要】

海の生態系は、植物プランクトンによる光合成を主とした有機物の生産(一次生産)に支えられています。海の一次生産の全体のおよそ半分を担う広大な低緯度海域では、一次生産に必要な栄養塩の多くは、南大洋(南極大陸周辺の海)の表層付近から流れ込んできている、と長らく考えられてきました。

東北大学・海洋研究開発機構 変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)のKeith B. Rodgers教授と、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、ソルボンヌ大学などの研究者からなる国際共同研究チームは、海洋観測データと海洋生態系モデルによる数値シミュレーション実験により、低緯度海域の一次生産を支える栄養塩の半分以上は、実は同海域の「トワイライトゾーン」(光がほとんど届かない中深層)でバクテリアによる有機物の分解によって再生され表層に運ばれてきたものであるという、従来の定説を覆す知見を得ました。

気候変動の現在の主要な影響予測においては、海洋の一次生産の将来予測の結果が、使用する海洋生態系モデルごとに大きく異なっています。本研究の成果は、海洋生態系の将来予測の不確実性を低減させ、漁業など海洋の生態系サービスの持続可能な利用に有益な知見を提供することが期待されます。

本成果は8月22日(日本時間)、科学誌Natureに掲載されました。

図1. 地球システムモデルによる、(a)全海洋規模、(b)低緯度海域の一次生産量の将来予測。将来の増減だけでなく、振れ幅もモデルによって大きく異なっている。一次生産が増加すると予測しているモデルは、本研究の着目するトワイライトゾーンでの栄養塩の再生過程が、モデル内で水温の上昇に影響を受ける形で表現されている。

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学・海洋研究開発機構
変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)
教授 Keith B. Rodgers
TEL: 022-795-6744
Email: keith.rodgers.b2*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)※英語でのご対応となります

(報道に関すること)
東北大学・海洋研究開発機構
変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)アウトリーチ担当
TEL: 022-795-5620 
Email: aimec-contact*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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