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世界初、安定な1価酸素イオンを含む結晶を発見 環境・エネルギー分野に期待されるp軌道強磁性を初観測

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 教授 徐超男
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 世界で初めて、固体結晶中の酸素イオンがマイナス1価(O)の状態で安定して存在することを発見しました。
  • 新たに発見した結晶材料Sr2AlO4は、酸素の最外殻にある2p軌道(注1で強磁性(注2が発現し、900K(627℃)の高温環境下でもその磁性が維持されることが確認できました。
  • エネルギー生成や触媒作用など、希少金属に依存しない新しい材料設計に貢献し、環境負荷を低減する次世代材料の基盤として期待されます。

【概要】

気候変動や資源の枯渇が進む中、持続可能なエネルギー生成や環境負荷の少ない化学反応の実現が強く求められています。東北大学大学院工学研究科の徐超男教授、内山智貴助教、鄭旭光特任教授(佐賀大学理工学部教授)、先端材料強度科学研究センターの陳迎教授のグループは、筑波大学、佐賀大学との共同研究で、酸素イオンが通常の安定なマイナス2価(O²)から変化し、安定してマイナス1価(O)で存在できる新たな酸化物材料Sr2AlO4を発見しました。従来の酸化物では酸素がマイナス2価でしか安定せず、磁性を持つことは困難でしたが、本材料では酸素の2p軌道に不対電子が残ることで、強い磁石の性質(強磁性)が発現しました。さらに、この磁性は900K(627℃)の高温下でも保持されるため、エネルギー生成や触媒としての高い性能が期待されます。

本成果は、新たな発光材料や触媒材料、エネルギー関連材料の機能革新にとどまらず、他の未知の機能や物性の創出にもつながり、今後の新物質設計に大きく貢献するものです。

本研究成果は2024年11月8日(日本時間)に、国際科学誌Advanced Scienceに掲載されました。

図1 O状態酸素の不対電子が強磁性を放つイメージ図(論文誌フロンティスピースに採用)

【用語解説】

注1. 2p軌道:p軌道は、電子が原子核の周りにどのように分布しているかを表す軌道の一種です。p軌道は特に「ダンベル」の形をしており、x、y、zの3方向に広がる性質を持っています。p軌道は、化学反応に関与することが多く、特に結合形成に重要な役割を果たします。「2」という数字は、原子の中心から見たときの「エネルギーの階層」(電子殻)の2番目を示しています。

注2. 強磁性:強磁性体の中では、原子の中の電子がもつ小さな磁石のような性質(スピンと呼ばれます)が、同じ方向にそろいやすくなり、全体として強い磁場を発生させます。この性質により、強磁性体は外部からの磁場がなくても磁気を持つことができ、冷蔵庫の磁石などの身近な磁石がその例です。

【論文情報】

タイトル:p-Orbital Ferromagnetism Arising from Unconventional O− Ionic State in a New Semiconductor Sr2AlO4 with Insufficiently Bonded Oxygen
著者:Xu-Guang Zheng*, Chao-Nan Xu*, Tomoki Uchiyama, Ichihiro Yamauchi, Tomasz Galica, Eiji Nishibori, Ying Chen
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 教授 徐 超男、特任教授 鄭 旭光(佐賀大学理工学部教授)
掲載誌:Advanced Science
DOI:10.1002/advs.202410977

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 徐 超男
TEL: 022-795-7348
Email: chao-nan.xu.c8*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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