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生命のゆりかごで渦が踊る 受精卵の細胞質流動の反転現象を解明

【本学研究者情報】

〇大学院医工学研究科 教授 石川拓司   
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 線虫の受精卵における細胞質流動が特定の渦方向に固定されず、時折反転するメカニズムを特定しました。
  • 数値シミュレーションで予測された小胞体の弾性が実験結果と一致したことで、反転現象の物理的根拠を立証しました。
  • 反転する渦が細胞内の物質を効率的に混合する仕組みを明らかにし、胚発生などの生命現象の理解を深める成果です。

【概要】

細胞内で起こる「細胞質流動」は物質輸送を促進し、代謝や成長において重要な役割を果たしています。多くの細胞では、この流れが一定の方向に決まっていますが、一部の細胞では流れの向きがランダムに変わることが知られています。特に線虫の受精卵では、細胞質流動の方向が時折反転することが観察されています。この反転現象のメカニズムは未解明でした。

東北大学、国立遺伝学研究所、立命館大学の共同研究チームは、線虫受精卵の細胞内で発生する「細胞質流動」が自発的に回転方向を切り替える仕組みを解明しました。この現象は、小胞体の弾性と微小管の相互作用によるものであることを、計算モデルと実験データを組み合わせて明らかにしました。また、反転する流れが細胞内の物質を効率的に混合する仕組みを明らかにし、胚発生を支える「絶妙な力学的バランスの重要性」を示しました。この成果は、受精卵を外界の刺激から守るバリア機能の仕組みを解明する手がかりとなり、生命科学と物理学の両分野に新たな視点を提供します。

本成果は2月5日に米国物理学会の学術誌、PRX Life に掲載されました。

図1. 受精卵の中で反転する細胞質流動のイメージ図

【論文情報】

タイトル:Swirling Instability Mediated by Elastic and Hydrodynamic
Couplings in Cytoplasmic Streaming
著者:*責任著者
石川 拓司*(東北大学大学院医工学研究科・教授)
鳥澤 嵩征(国立遺伝学研究所・助教)
和田 浩史(立命館大学理工学部・教授)
木村 暁*(国立遺伝学研究所・教授)
掲載誌:PRX Life
DOI:10.1103/PRXLife.3.013008

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問い合わせ先

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
教授 石川拓司
TEL: 022-795-4009
Email: t.ishikawa*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
TEL: 022-795-7491
Email: bme-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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