2025年 | プレスリリース・研究成果
感情は正確な運動制御に影響を及ぼす 楽しい曲を聴いている時には関節角度制御の精度が低下する
本学研究者情報
東北大学産学連携機構
イノベーション戦略推進センター
特任教授 永富良一
発表のポイント
- 感情がスポーツなどのパフォーマンスを左右することは古くから知られていましたが、動きの正確性にどのように影響するかは未知でした。
- 研究参加者が悲しい・楽しい・どちらでもないと感じる曲を選び、それぞれを聴かせながら指示された関節角度の再現精度を確かめました。
- 楽しい曲を聞きながらの誤差が最も大きく、悲しい曲を聴きながらの関節角度再現(関節位置覚注1)の誤差がもっとも小さくなることがわかりました。
- 関節角度の調節は固有知覚注2に基づく中枢神経系の運動制御により遂行されていますが、想起される感情により運動制御への影響が異なることが明らかになりました。
概要
トップアスリート、演奏家、熟練工などのパフォーマンスは身体各所の関節の正確な制御により支えられています。正確な制御は反復訓練により獲得されますが、訓練中に再現よく制御できても本番などの精神的な緊張や感情がゆらぐ状況においてはエキスパートでもミスが起こります。しかし運動制御の基本となる関節角度の調節が感情によりどのような条件でどのように影響を受けるのかはこれまで明らかにされていませんでした。東北大学産学連携機構未来社会健康デザイン拠点の永富 良一 教授(研究推進時:大学院医工学研究科)、Negyesi, Janos国立ハンガリースポーツ科学大学助教、東北大学大学院工学研究科 奥山武志 准教授、同大学院医学系研究科運動学分野大学院生 袁可青の研究チームは、特に姿勢制御に重要な足関節(足首)の関節角度を正確に評価するシステムを開発し、研究協力者がそれぞれの楽しい曲、悲しい曲、どちらでもない曲を聴取しながら関節角度の再現性をテストした結果、楽しい曲>どちらでもない曲>悲しい曲の順に関節角度の再現誤差が小さくなることを見出しました。
本研究成果は、2025年2月7日に国際科学誌Scientific Reports誌に掲載されました。
図1 関節位置覚試験における関節角度の誤差
図2 悲しい感情の時に関節角度の調節精度が高く、楽しい感情の時に調節精度が低ければ、こんなことが起こるかもしれません。
【用語解説】
注1.関節位置覚:関節位置覚とは、関節を動かしたときにどれくらいの角度になっているか、どれくらい動かしたか、どれくらいの速度で動かしたかを感じる知覚神経系の役割の一つです。
注2.固有知覚:関節位置覚を含む、骨格筋、腱などの位置、角度、速度など体を正確に動かすときに必要な知覚です。
【論文情報】
タイトル:The influence of emotional states induced by emotion-related auditory stimulus on ankle proprioception performance in healthy individuals(健常者への感情関連聴覚刺激が足関節固有知覚依存能力に与える影響)
著者:Keqing Yuan, János Négyesi, Takeshi Okuyama & Ryoichi Nagatomi
*責任著者:東北大学産学連携機構 特任教授 永富良一(ながとみ りょういち)
掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-025-87590-8
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学産学連携機構
イノベーション戦略推進センター
特任教授 永富良一
TEL:022-752-2191
Email:ryoichi.nagatomi.c4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学産学連携機構
イノベーション戦略推進センター事務支援室
電話:022-752-2188
Email:promo-innov*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)